故障に泣き続けたエリートの矜持 J1復帰弾を決めた福岡DF中村が乗り越えた挫折の日々

7年ぶりの古巣復帰で大仕事 敵将大熊監督に恩返し弾

 14年に大宮移籍を経て今季、7年ぶりに「いつか戻りたい」と語っていた愛する福岡に帰ってきた。プロのキャリアを歩み始めた原点からの再出発を選択した。
 中村はこの日、自らの決断が正しかったことを証明した。ボールがネットを揺らすのを見届けると、右拳を振り上げてアウェーゴール裏に陣取る福岡サポーターの元へと全速力で駆け寄った。この劇的な一撃で福岡は同点に追いつくと、そのまま1-1で試合終了。5年ぶりのJ1復帰を手にした。
 相手ベンチには、U-20日本代表時代、FC東京時代、さらには大宮でも師弟関係にあったC大阪の大熊清監督が座っていた。誰よりも中村の実力を評価してきた敵将の目の前で挫折を乗り越えた姿を証明する恩返し弾を決めた。
 試合直後、「今の気持ちは」と尋ねられると「達成感です」と言い、「多くの人の前で達成できて良かった」と続けた。そして、「ここからがスタートだと思うので、今日は喜んで、来年に切り替えたい」と言葉を重ねた。
 「もう一度輝きたい」と願った中村は、この日、愛するクラブとともに輝く舞台に立っていた。それは懊悩(おうのう)する日々を送ってきた男にとって、久しく味わってこなかった充実の時だったに違いない。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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