新たなドーハ組の名将誕生か 監督1年目で福岡をJ1に導いた「アジアの壁」、井原監督の光る手腕
マリノス時代の盟友招聘で体制固める
指揮官は今季福岡の監督に就任した。2006年に北京五輪代表のアシスタントコーチを務め、2009年から14年まで柏でアシスタントコーチを務めた。柏では2度監督代行を任されたが、現役時代のスーパースターは9年間の下積み生活を送った。そして、じっくりと指導者としての揺るがぬ下地を作った。満を持したトップチームの監督に就任すると、三浦文丈コーチ、鈴木健仁チーム統括部長という現役時代マリノスで苦楽を共にした盟友を招聘。人格者は厳しくも温かい目でチームを育てた。J1でも戦った歴史がある福岡だったが、昨季はJ2で16位。J1でも上位を争い、資金力も経験もある大宮やC大阪が降格してきた上に、アジアを制覇したこともある磐田がJ2で2年目。昇格へ強い決意を見せていたこともあり、苦戦が予想されていた。そして、リーグ戦は3連敗のスタート。あまりにも厳しい船出だった。
しかし、「自分たちがJ1に行くんだという強い気持ちを持ってトレーニングに切磋琢磨するのが一番大事だ」という指揮官の方針の下でチームは甦る。第4節から11戦無敗と波に乗ると、上位に食い込んだ。シーズンの終盤12試合は11勝1分と最高の調子を維持した。自動昇格の2位磐田と同じ勝ち点82を稼ぎながらも、得失点差でわずかにおよばずにプレーオフに回っていた。
それでも、この大舞台では最強の3位たる所以(ゆえん)をしっかりと見せた。準決勝で6位からプレーオフ(PO)進出の長崎に対してPO史上初めて上位チームの勝利を収めた。下克上を食い止めると、決勝では粘り強く戦い、引き分けに持ち込んだ。そして、J1への切符をつかみ取った。