「ジャパンズウェイ」の標語は核心を突いた知恵? 進歩に乏しき日本代表強化の現状
具体的な中身がスカスカのスローガンと、少しバカにしていたのだが…
クラブチームなら1カ月で解決できるかもしれない問題が、代表では1年経っても放置されている。日本だけでなく、世界中がそうなのだ。戦術的な進歩のスピードはひどく遅い。新しい戦術を導入するには時間が足りないから仕方がない。
では、代表チームをどうやって強化するかというと、一つは新しい選手を使うこと。進歩は人に頼るほかない。もう一つは、チームがどうあるべきかを説くこと。日本代表なら攻守に全員がコミットするとか、ハードワークするとか、諦めないとか、何かそんな心構えみたいなことだろうか。
日本サッカー協会が盛んに言うようになった「ジャパンズウェイ」というのは、サッカーの具体的な中身がスカスカの、スローガンみたいなものだと少しバカにしていたのだが、何かを作り込むのが難しい代表では確かにそれぐらいしかやれることがないのかもしれない。土台になるイメージをしっかりさせておくのが大事。あとは4年間に何回か訪れる、まとまった練習時間を取れる機会に、積み上がっていた戦術的課題をバタバタと片づけていけばいい。
いちいち進歩など目指していたら、何もかも中途半端になりかねないのだから、とりあえず「ジャパンズウェイ」で持ちこたえていくというのは、けっこう核心を突いた知恵なのかもしれない。横文字で格好つけるほどのことでもない気はするけれども(逆にカッコ悪いんだけど……)。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。