“夢”を追うフランクフルトが越えるべき壁 長谷部も求める「ワンランク上の競争」
FW陣に実績あるバス・ドスト、アンドレ・シウバが加入
「まあ難しいですけどね。ターンオーバーしながらやるところもありますけど、実際今のところ、この前のファドゥーツ戦以外はそんなに大きく監督も変えてないので。そういう意味では、(普段試合に出られていない選手は)監督が変えようという気になるようなアピールが足らないのかなと。でも、もっともっとチームの競争が上がってくれば、よりチームとしてヨーロッパリーグもカップ戦もリーグ戦も、全部いい形で戦えるんじゃないかなという感覚はあります」
既存選手のクオリティーが低いわけではない。新加入選手にとっては時間も必要だ。アディ・ヒュッター監督は、この日前半だけで交代となったFWデヤン・ヨベリッチを、「まだ若い選手だというのを忘れてはいけない。今日も特別に悪かったわけではない。慣れるまでにはいろいろな時間が必要だ。経験を積み重ねていくことが大切だ」とかばった。練習や試合を通じて、相手との距離感、スピード感を順応させていくには、相応の経験が必要なのだ。
その点で計算できる戦力として、今夏の移籍市場で元オランダ代表FWバス・ドストと、ポルトガル代表FWアンドレ・シウバという2人のストライカーが加入したのは大きな補強となる。
デュッセルドルフ戦で後半開始から起用され、ファーストシュートをゴールに結びつけたドストについて、ヒュッター監督は「木曜日にまだスタンドで試合を観戦して、そこから2日後にピッチに立ってゴールを決めて、チームを勝利に導いてくれたんだ。凄いことではないか」と素直に称賛し、シルバに関しては「以前からクラブとして興味をずっと持っていた。(アンテ・)レビッチの移籍は残念に思う。だが、その代わりに非常に優れたアンドレ・シウバという素晴らしい、そしてゴールを決められる選手を獲得できたことをうれしく思う」と期待を口にしていた。
長丁場を戦い抜くために十分な戦力と、効果的な選手起用。フランクフルトがもうワンランク上のクラブになるために、越えなければならない高い山だ。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。