現代の「サイドバック理想像」に変化 “MF的プレー”の重要性が世界的に増加傾向
Jリーグでも生じている現象 前線と最終ラインの“リンクマン”に…
サイドバック(SB)の役割が変わってきている。SBといえば、タッチライン際で上下動を繰り返し、縦に走ってクロスボールを蹴る、逆にそれを阻止するというイメージだった。そうしたプレーは現在でもあるのだが、少し比重が変わってきている。
現在、攻撃の起点はSBになっている。SBがボールを受ける場所は中盤で、後方と前方の中継点という意味ではまさにリンクマンなのだ。ウイングとの兼任というより、MFとしてのプレーが明らかに増えている。これは世界的な傾向で、Jリーグも例外ではない。
SBが攻撃の起点になっているのは、タッチラインを背にしているので、パスを受けた時点で余裕があることが理由の一つだが、それ以上に攻撃の中継となる高い位置までポジションを上げられるようになったからだ。
SBを高い位置へ送り込めるようになったのは、後方の組み立て方に変化があったから。ひと昔前は、後方のビルドアップといえば4バックならDF4人が一番後方のラインを形成していた。もちろん、SBの位置はセンターバック(CB)より高くなるのだが、現在ほど高い位置にポジションを取っていなかった。
しかし、後方のビルドアップにおいてMFが下りてくることが一般的になっていく。MFがCBの間に下りる、CBとSBの間にポジションを取る。そうして後方の数的優位を確保し、ボールも確保するようになった。Jリーグではミハイロ・ペトロヴィッチ監督のサンフレッチェ広島がその先駆けだったが、現在ではほぼすべてのチームがそうしたビルドアップを行っている。
後方のビルドアップが変化したことで、SBはより高い位置へ送り出されるようになった。後方のビルドアップにおけるボールの出口は、主に左右のハーフスペースである。フィールドを縦に5つに分けた時の、両端から2番目のレーンだ。そこで攻撃側のDFやMFがフリーでボールを持つようになった。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。