久保建英と「悲しいデビュー」の要因 マジョルカで高まる期待と早期“融合”の難しさ
【スペイン発コラム】敵地バレンシア戦で待望のデビュー 劣勢のなかでの難しい試合に…
日本代表MF久保建英のレアル・マドリードからマジョルカへの期限付き移籍は、8月22日に突如として決定した。そして3日後のリーガ・エスパニョーラ第2節、ホームで行われるレアル・ソシエダ戦に向けて、わずか2回の練習参加ながら、今夏スペインで大きな話題となった18歳アタッカーの招集メンバー入りへ注目が集まっていった。
試合当日、チームバスにジャージ姿で乗り込み会場入りした久保を目撃した瞬間、1部リーグデビューの可能性が感じられた。オフィシャルショップでは久保の名前入りユニフォームがすでに販売され、キックオフ前には完売に。これはマジョルカサポーターの大きな期待の表れと言っていい出来事だった。
しかし最終的に久保はベンチ入りメンバーに入ることができず、マジョルカでの初戦はスタンド観戦。チームはレアル・ソシエダに0-1で敗れている。
試合翌日の練習後、久保がビセンテ・モレーノ監督から身振り手振りを交えてのマンツーマン指導を受ける場面があった。5分ほど続いたその瞬間は、加入間もない久保が監督と信頼関係を築くための重要な時間のように感じられた。
さらにモレーノ監督は、アウェーで行われる第3節バレンシア戦2日前の記者会見で「今週しっかりと練習してきたので招集メンバー入りの可能性がある」と久保にデビューのチャンスがあることを明かした。そして試合当日のキックオフ1時間前、久保の初のベンチ入りが確定したのだった。
気温34度という暑さのなか、マジョルカは前半、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場チームの強豪バレンシアを上回るチャンスを作ったが、PKによる前半43分と後半12分の2失点と、バレンシアが時間の経過とともに調子を上げてきたことにより、後半は完全に劣勢となった。
久保は後半5分にアップを開始すると、同34分に待望の瞬間が訪れる。ついに1部リーグ、そしてマジョルカでの公式戦デビューを果たした。またこれは、欧州4大リーグ(スペイン、イングランド、ドイツ、イタリア)での日本人最年少出場記録でもあった。
久保は4-2-3-1の右サイドハーフでプレー。しかしボールを上手くもらうことができず、積極的にドリブルを仕掛けるシーンもあったが相手にカットされ、なんのインパクトも残せないままデビュー戦を終了している。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。