トーレスを支えた「ゴールを見ない」ゴール “神の子”が世界を驚かせた天才的感覚の真髄

トーレスを世界的ストライカーに飛躍させた“感覚的”なスーパーゴール

 スペイン代表でも長年にわたり2トップを組んだ神戸FWダビド・ビジャは、冷静かつ的確なシュートで得点を積み重ねるフィニッシャーだったのに対し、トーレスは“ゴールを見ない”プレーが象徴するように、まさしく天才的な感覚でゴールを奪うストライカーだった。対照的な特徴を擁する2人が前線に揃っていたことも、黄金期を迎えた“無敵艦隊”のストロングポイントでもあった。

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 一方で、感覚的なプレーが多い分、スランプにも陥りやすい一面もあった。11年に加入したチェルシーでは、デビューから初ゴールまで903分間もかかるという大不振にも陥った。キャリアの全盛期を過ごしたリバプールでさえも、当時の指揮官、ラファエル・ベニテス監督(現・大連一方)の指導を受けた居残り練習で、ほとんどのシュートをゴールマウスから外してしまう不恰好さを見せていたという。と思いきや、翌日の試合では信じられないスーパーゴールを叩き込む別人ぶりを発揮したというのはファンの中でも有名な話だ。

 現役ラストマッチの神戸戦を終え、最後の記者会見に臨んだトーレスは、「1人の選手がFWとして生きていくと決めたなら、ゴールを決め続けなければならない。どんなに良いプレーをしても、決めなければ外される世界」と、ストライカーとしての生き様を振り返った。スランプに陥る苦しい時期も過ごした“神の子”だが、まさしく栄光と挫折に満ちた紆余曲折のキャリアの中で決めてきた“ゴールを見ない”ゴールは、これからもサッカーファンの中で語り継がれていくことに違いないだろう。

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