トレンドという言葉だけでは語れない2014ブラジル大会の総括 ドイツが示した「南アフリカからの進化」と「世界で勝つために必要だったもの」
ドイツは最適なポジショニングで最後に危機を回避
ヨアヒム・レーブ監督は試合前の会見で「相手に合わせて自分たちのやり方を変えたりはしない」と話していた。その言葉通り、ドイツは高めに守備ラインを保ち、主導的にゲームを進めていった。一方でボールを失うと、できるだけすぐに相手にプレッシャーをかけて、カウンターの起点となるパスを抑えにかかる。しかし、常にそこで抑え切れるわけではない。
パスを出された場合は、まずそのボールが相手にわたる前にカットするか、それが出来ない場面では相手の攻撃を遅らせるポジションを取ることが求められる。今大会MVP級の活躍を見せてきたCBマッツ・フンメルスが、この日はポジショニングを誤るシーンもあり、前半にはアルゼンチンのエースであるリオネル・メッシのドリブルに何度か振り切られ、ピンチになりかけた。
カウンターからサイドを崩された場面では、折り返しのパスに対する位置取りがポイントになるが、その点で素晴らしい動きを見せたのがMFバスティアン・シュバインシュタイガーだった。こういった場面でやってしまいがちなミスは、慌てて戻ってゴールを守ろうとするばかりに、守備ラインにまで入り込んでしまうこと。そうなると、ライン裏のスペースを敵にプレゼントしてしまう結果になる。しかし、シュバインシュタイガーは素早く帰陣しながらも、ペナルティエリア内の状況を冷静に把握し、相手へのラストパスを読み切ってポジションを取っていた。
また、これまで不安定な面を見せていたDFジェローム・ボアテングが抜群の存在感を見せたことも大きい。鋭い出足でアルゼンチンFWへのパスを何度もカットし、空中戦でもほとんど負けなし。自分のエリア外へのボールに対して集中力を切らすことがある選手だが、この試合では気を抜くようなシーンもなく、常に最適なポジションへと動いていた。
そんな中でも、アルゼンチンはドイツCBの間にできるスペースを狙い、何度か抜け出すことに成功したが、最後の砦としてGKマヌエル・ノイアーが立ちふさがった。派手なセーブこそなかったが、どの場面でも相手との間合いを素早くつめると適切なポジショニングでシュートコースを消した。シュートを打つ時まで重心を動かさずに待つことが出来るので、相手も駆け引きがしにくい。クロスボールに対しても制空権の高さと守備範囲の広さで完全に対応してみせた。