宮本恒靖、ボスニアで築く民族融和への架け橋 広がりを見せる支援の輪

クラウドファンディングで当初の目標金額150万円を達成

 元日本代表DF宮本恒靖が、自身も含めたFIFAマスターの同期生6人で進めているボスニア・ヘルツェゴビナの民族融和に向けたプロジェクト「マリモスト」では、クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING by T-SITE」と協力して活動資金の支援を募り、11月4日の開始からちょうど10日で当初の目標金額150万円に到達した。プロジェクトに携わる宮本は多くの人からの賛同を得ることに成功し、想定を超えるスピードで目標を達成したことに驚いたというが、「皆様に良い報告ができるように」と、感謝の思いと今後へ向けた意気込みを語っていた。

「クラウドファンディング自体も初めての試みで分からないことばかり。支援が集まるかは不安がありました。それでもこのプロジェクトに多くの方々が興味を持ってくれて、共感もしていただいた。本当にありがたく思っています。こうした問題について、スポーツを通して少しでも訴えかけることができたらいいなと思います」

 現役時代には日本代表の一員として2度のワールドカップに出場し、欧州でのプレーも経験した。センターバックの選手としては決して大きくない体で世界を相手に立ち向かってきた男は今、日本ではあまり馴染みのない「民族融和」という問題に立ち向かっている。

 宮本は現役引退後、FIFAとCIES(国際スポーツ研究センター)が運営する修士課程「FIFAマスター」において、元プロサッカー選手としては日本人で初めて、世界でも二人目の修了生となった。そこでの修士論文にあたるグループワーク研究として「ボスニア・ヘルツェゴビナの民族対立をスポーツアカデミーの活動を通じて融和することは可能か」というテーマを選択し、FIFAマスターで取り組んだマーケティングや歴史学、法学など多様な面から検証、実現可能との結論を導き出した。

 FIFAマスター修了後には日本の外務省や国際協力機構(JICA)、国連開発計画(UNDP)などの協力もあり、修士論文で検証したテーマを実現すべく仲間たちと奮闘している。プロジェクトの名前は「マリモスト」。現地の言葉で“小さな橋”を意味する。1990年代前半に戦後のヨーロッパ最悪とも言われた紛争で死者20万人、難民・避難民200万人の被害を出したボスニア・ヘルツェゴビナは、いまだ民族間の対立は根強く残るが、子どもたちを対象とするスポーツアカデミーの活動を通じて対立するそれぞれの民族が手と手を取り合い、多文化の中で共存していくことを目標としている。

 

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