「マジック・トライアングル」解体のフランクフルト 長谷部の“特別な存在感”と懸念点
リーグ開幕前から強いられる過密日程、選手層の薄さを補えるか
経験に裏打ちされたポジショニングと動き出しのタイミングの良さは、ますます磨きがかかっている。フランクフルトの情報を集めるオンラインメディア「SGE4EBER」は、「35歳という年齢を全く感じさせない。ブレーメンのクラウディオ・ピサーロのようにまだ数年間はトップレベルでやっていけるのではないか」と絶対的な評価をしていた。
今季のポイントはコンディションの維持になる。昨季後半は過密日程の疲れがのしかかり、シーズン終盤に力尽きてしまったフランクフルトだが、今季はそれ以上に厳しくなる可能性がある。
EL予選2回戦から戦うフランクフルトは、他クラブよりも2週間以上も早く公式戦を戦っている。本来フレッシュな状態で挑めるはずのブンデスリーガ開幕戦(18日)だが、直前の15日にEL予選3回戦ファドゥーツとの第2戦があるため、中2日での試合を余儀なくされる。敵地での第1戦に5-0と勝利しているため、ELプレーオフ出場はほぼ間違いないだろう。だがそれは、その後の2週間も週内に試合が入ることを意味する。9月上旬の国際Aマッチウィークによる中断期までに、他のクラブはDFBポカールとブンデスリーガ2試合の3試合(スーパーカップ出場のドルトムントとバイエルンは4試合)だが、フランクフルトはすでに9試合も戦わなければならない。
ヒュッター監督は「我々は昨シーズン辿り着いたところまで、また行きたい。昨シーズンよりも成長していく」と今季の目標について語っていたが、そのためにはどこかで主力をしっかりと休ませる必要が出てくる。長谷部は昨シーズンからのトップコンディションを維持させており、プレシーズンからここまで好プレーを披露しているが、さすがに全日程フル出場は厳しすぎる。昨シーズンは選手層の薄さから適切なローテーションをすることができなかったが、クラブがここからどんな補強を敢行し、指揮官がどのような采配を見せるのかがとても重要になるだろう。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。