レアル久保建英と「3つの進路」 チームの現状と過去の事例に見る今季の“最適解”は?

(左から) ミリトン、ヴィニシウス、バルベルデ【写真:Getty Images】
(左から) ミリトン、ヴィニシウス、バルベルデ【写真:Getty Images】

カルバハル、バスケス、アセンシオら“武者修行”パターンが近年増加

 また、現在のメンバーでカスティージャからダイレクトでトップチームに昇格した選手も、DFナチョ・フェルナンデスとFWマリアーノ(その後、リヨンへの期限付き移籍あり)のみ。その他、最近ではFWアルバロ・モラタ(アトレチコ・マドリード)、FWヘセ・ロドリゲス(パリ・サンジェルマン)、DFアクラフ・ハキミ(ドルトムント)、DFセルヒオ・レギロン(セビージャ)がそうだったが、その数は限られている。

 さらに現時点では、久保にとって「外国人枠」も障害となる。3枠をMFフェデリコ・バルベルデ(ウルグアイ)、DFエデル・ミリトン(ブラジル)、ヴィニシウス(ブラジル)が占めると見られているため、久保がリーガ開幕からトップチームに所属する可能性は非常に低そうだ。

 ただ「AS」紙は、レアルがそれを回避する手段としてヴィニシウスとロドリゴをカスティージャ、久保をフベニールA(U-19)に登録して外国人枠に一つ空きを作り、ジダンが必要に応じて3選手のうちの誰かを起用できる状態を作る戦略に出ているとも報じている。またバルベルデが9月中に二重国籍を取得するという話もあるため、今後の動向を見なければならない。

 久保が将来トップチームに辿り着くには、3つ目の可能性が一番高いだろう。

 レアルは近年、“武者修行”として2つの政策を積極的に推し進めている。1つ目はカスティージャの選手を国内外のクラブに期限付き移籍で出し、トップチームに連れ戻すこと。2つ目は契約した有望な若手選手をそのまま所属元、もしくは他クラブでプレーさせた後にトップチームに加入させることである。実際にこの形で戻っている選手が何人もいるため、久保が他クラブでトップリーグの経験を積み重ねて結果さえ出せば、トップチームに戻れる可能性は大いにあるだろう。

 現在のレアルのメンバーを見てみると、前者ではDFダニエル・カルバハル(レバークーゼン)、FWルーカス・バスケス(エスパニョール)、バルベルデ(デポルティボ・ラ・コルーニャ)、後者ではMFマルコ・アセンシオ(マジョルカ、エスパニョール)が当てはまる。またヴィニシウス(フラメンゴ)とロドリゴ(サントス)はレアルとの契約後、18歳になるまで所属元のクラブに留まっていた。

 またクラブは今夏、新たにサラゴサから昨シーズンのセグンダ(スペイン2部)でブレイクした20歳のMFアルベルト・ソロを獲得し、そのままサラゴサへの1年間の期限付き移籍でプレーさせる予定にしている。

 一方、カスティージャを期限付き移籍で離れた後、戻れなかった選手たちも当然のことながら多数いる。最近ではFWラウール・デ・トマース(ベンフィカ)、FWブルギ(アラベス)、FWディエゴ・ジョレンテ(レアル・ソシエダ)、MFオマール・マスカレル(シャルケ)などがそのケースに当てはまる。全選手とも2年以上、他クラブでプレーした後、戻れる空きがなく最終的にレアルを完全に離れているのである。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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