16年の時を駆け抜け、引退の道を選んだ鈴木啓太 「浦和の男」が最後に伝えたかった思いとは

浦和黄金期を知る名ボランチが臨んだ、リーグ戦ラストマッチ

 万雷の拍手と大歓声。浦和を愛し、浦和に愛された男の姿がそこにあった。

 22日のJ1リーグ最終節、浦和はホームに神戸を迎えた一戦に5-2と勝利。試合後には、浦和一筋16年の元日本代表MF鈴木啓太の退団セレモニーが実施され、そのスピーチの中で今季限りでの現役引退が発表された。

 ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は、試合前日の記者会見で鈴木のベンチスタートを明言していた。昨季後半に発症した不整脈の影響が大きく、リーグ戦のベンチ入りは8月12日のセカンドステージ第6節の新潟戦以来。公式戦出場は、7月19日の第3節広島戦で後半28分からピッチに立って以来離れていた。

「啓太さんをピッチに――」

 前日練習後に選手たちが語ったその思いで、浦和イレブンは団結していた。試合開始から神戸を圧倒し、前半13分までに3-0とリードを広げた。鈴木自身が「4-0とか5-0の状況で出させてもらえたらいいね」と、冗談めかして話していたとおりの展開になるかと思われた。しかし、そこから2点を返されてスコアは3-2に。すでに2つの交代枠が使用されていた後半30分の少し前に、今季リーグ初先発となったDF加賀健一が右足をつってしまう。

 ペトロヴィッチ監督はベンチの前で悩む姿を見せた後、チームスタッフに声を掛ける。ウォーミングアップエリアから呼び出されたのは、MF梅崎司だった。そして、加賀と交代でピッチへ。この瞬間、リーグ戦ラストマッチでの出場はなくなった。

 はめていた手袋をポンとベンチに置き、座り込む鈴木の姿があった。

 

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