久保建英の才能は誰もが“認めている” レアル生き残りの鍵は「守備力」にあり
バイエルン戦の“ヤング・レアル”でロドリゴとともにアピールに成功
久保健英がレアル・マドリードでデビュー……といってもプレシーズンマッチではあるが、インターナショナル・チャンピオンズカップ(ICC)のバイエルン・ミュンヘン戦(20日)の後半からフィールドに立った。
ICCはシーズン前のスパーリングにすぎないが、このバイエルン戦はプレシーズンマッチにしては強度もあり、久保のテストとしては悪くない試合だった。レアルは後半から若手中心に総入れ替え、いわば「ヤング・レアル」とも言うべき編成になっていた。
フランクフルトから獲得したルカ・ヨビッチ、トップチームのルーカス・バスカス、ケイラー・ナバスも含まれていたが、インサイドハーフの久保とロドリゴは18歳、昨季活躍したヴィニシウス・ジュニオールも19歳。若い攻撃陣はバイエルンを相手に堂々たるプレーを見せていた。最終的に1-3で敗れ、こういう試合でも結果を出しておきたい若手にとっては残念に違いないが、内容は悪くなかったと思う。
ジネディーヌ・ジダン監督なのかコーチなのか、それとも観客なのかは判然としなかったが、久保の守るエリアにボールが来ると、常に「クボ!」という声が聞こえていた。ボールホルダーに対して守備をするのが久保であることを、はっきりさせるための声がけのように思われる。
左のインサイドハーフでプレーした久保は、攻撃面では才能の片鱗を見せていた。簡単には奪われない、パスの狙いやコントロール、ボールを受けるための動き、ファーストタッチの上手さなど、Jリーグでも見せてきた能力はヨーロッパのトップレベルでも通用しそうだ。
ただ、久保は「メッシ」ではない。年間40ゴールも叩き出すような怪物ではなく、したがって守備が免除されることもない。トップチームでプレーできるかどうかは、守備力にかかっている。
23日のアーセナル戦でマルコ・アセンシオが重傷を負ってしまったことで、ロドリゴと久保のトップチームへの昇格もあるのではと、メディアは報じている。バイエルン戦でFKから素晴らしいゴールを決めたロドリゴのトップ昇格が有力視されているが、ロドリゴが才能を発揮したのはこのFKの時ぐらいだった。1回のチャンスを逃さずに目に見える結果を出したところはスター性があるが、これだけでレアルのベンチに入れるかというと疑問である。ロドリゴよりも数多くのプレーで能力を示していた久保にしても、それほど評価は変わらないだろう。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。