リズムを変えた「成功率85%」のキラーパス 柏木はハリルJのレジスタになれるのか
柏木投入がもたらした顕著な変化
スコアは2-0、得点経過は後半7分にオウンゴール、後半45分に本田圭佑と、いずれもハーフタイム後に生まれている。ここからは前半と後半の違いをデータで見てみよう。
[表2]のとおり、シュート数は前半の9本から16本と倍近く増えている。枠内シュート数は5倍、枠内シュート率は22.2%から62.5%と3倍近く改善されている。このシュートを詳しく見ると、この日の出場時間32分の本田がシュートを6本打ち、そのうち4本が枠内シュートで5試合連続となる1得点を挙げている。後半の増加分を、ほぼ彼一人で賄っていたことになる。
それ以外のプレーを見ても、チャレンジの数、ドリブルに関するデータ、ボールを失った数など、いずれも後半に改善されている。ハーフタイムにメンバー交代したのは、遠藤航と柏木陽介のみ。この2人の交代によって、データに顕著な違いが表れたのか見てみたい。
先の表で見たとおり、ゴール前で得点の可能性を高めるPA内へのパスは、初戦から2戦目ではほぼ半減(103本→54本)し、成功率(59.2%→55.6%)も悪くなっていた。前半で交代した遠藤がPAに出したパスはゼロ、一方の柏木が出したパスはチーム最多の13本、そのうち成功したパスは11本。チームの平均成功率59%を大きく上回る85%だった。日本のPAに入ったパスの3分の1は、後半から入った柏木の左足から繰り出されていたことになる。
また、パスの出し場所がなく単に放り込むロングパスは、相手へのプレゼントになることが多い。初戦の30本から51本と70%増加した精度の低いロングパスも、その精度が上がれば時に効果的なキラーパスに生まれ変わる。遠藤のロングパス5本中成功したのは1本のみ、同じく5本のロングパスを送った柏木の成功率は100%だった。遠藤は、U-22で主将を務める日本の未来を明るく照らす宝だ。しかし残念ながら、この日のテストの結果は必ずしもポジティブなものではなかった。逆にメンバー交代したもう1枚のボランチが、この日のゲームを大きく変えてしまったようだ。
通信簿の通信欄には、「わずか3分の1の出場時間ながら、やはり絶対的な存在感を示した本田選手。彼はやはり代えのきかないエースです」。そして、「柏木選手、日本にリズムと変化を与えてくれる、力強く新しい戦力が加わりました」と記述しておこう。
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データ提供元:Instat
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サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images