欧州王者リバプール、崩壊から再生への「3年7カ月」 闘将クロップが変えたものとは?

辛抱強くFWフィルミーノを使い続けた【写真:Getty Images】
辛抱強くFWフィルミーノを使い続けた【写真:Getty Images】

フィルミーノを辛抱強く使い、世界最高の“偽9番”へと成長

 この年の経験が後につながった最大の成功例は、ロベルト・フィルミーノだろう。もしもこの年の監督が、前年のドルトムント戦でアンフィールドに久々の感動を呼び戻し、長期契約を結んだばかりのクロップでなければ、ブラジル代表FWの起用法にはもっと批判が集中したかもしれない。

 クロップは4-3-3の3トップ中央でフィルミーニョを起用し続けた。リバプール移籍前はMFかウインガーだと見られていたブラジル人を、センターフォワードのポジションで使い続けたのだ。

 このクロップのやり方に、疑問を抱く者は決して少なくなかった。この時のリバプールには、スアレスとのコンビでプレミア20ゴールを達成したダニエル・スターリッジがいたし、将来を嘱望された若きベルギー代表FWディボック・オリギもいた。

 だから「本職のセンターフォワードを起用してゴール数を増やせ」と、そんな声も上がったが、結局は「クロップがそうしたいなら仕方がない」という空気が優った。そもそもクロップをクビにして、次に誰を呼べばいいというのだ。

 それに結果的にもこのシーズン、22勝10分6敗の勝ち点76の4位に躍進して、CLの出場権を獲得した。

 こうなると、クロップがリバプールに有効な戦術とチームスピリットをもたらし、就任2年目で早くもスアレスのワンマンチームから脱却することができたという前向きな評価が、英メディアの大部分を占めるようになった。

そして2017-18シーズン、開幕前にルーカス・レイバやケビン・スチュワートらを放出し、モハメド・サラー、アンドリュー・ロバートソン、アレックス・オックスレイド=チェンバレン、ドミニク・ソランキを獲得。ご覧の通り、この年の補強も大当たりである。

 フィルミーノはこの年、ついに本領を発揮した。右にサラー、左にマネを従えたことで、世界最高の“偽9番”としてその名を馳せることになった。

森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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