インテル長友復権の裏にあるもの 戦力外状態でも欠かさなかったオフ返上トレ
肌で感じる世界との差 尽きぬ向上心
名門への加入当初も、今季同様に激しい定位置争いによってベンチに座る時間が続いた。そんな時も、日々の練習では笑顔を絶やさず、誠実に取り組み続けた。そして出場のなかった試合の翌日には、チームのオフ日でも決まって練習場のアッピアーノ・ジェンティーレへと車を走らせた。誰に言われたわけでもなく、ピッチを一人走り続け、来るべきチャンスに備え続けた。腐らず、虎視眈々とオフ返上で準備を進める姿が、戦力外と長友をみなしていたマンチーニ監督の心を動かしたのだ。
そうして出場機会をつかむと、溜め込んだエネルギーを放出するようにピッチの上で大暴れしてきた。それを6シーズン目を迎えた名門インテルで、ずっと続けてきたのだ。
だからこそ、カンボジア戦後も、こんな言葉を残した。
「まだ自分自身にも課題もたくさんあります。できた部分も、課題ももちろんある。それは半々くらい。まだまだやらないとダメ。この試合だけで判断するのは難しい。まだまだチーム全体としても誰が出てもいいプレーができて、監督が求めているサッカーをできないと難しいかなと。チーム全体のレベルとしては、もっともっと上げていかないと世界(レベルの相手)には厳しいと思う」
欧州の名門で戦い続けるというシビアな世界に身を投じてきた長友。日本と世界との距離を日々肌で感じ、知る男だ。「まだまだ」、「もっともっと」と言い続ける彼のそうした経験則は、日本代表の中にあっても、やはり貴重だ。今年1月の移籍も騒がれる中、彼を求めるチームの噂は絶えない。長友佑都には、まだまだそれだけの価値があるのだろう。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images