【W杯詳細分析オランダ-コスタリカ】ここまでの全5試合で采配が的中 オランダを4強まで導いたファン・ハール采配の凄さ 

PK戦ではクルルの跳んだ方向と相手のキッカー5人が蹴った方向がすべて一致

 しかし、コスタリカ戦でファン・ハールはなかなか動かなかった。最初の交代は76分にデパイに変えてレンスを入れたが、システムの変更はしていない。もしも90分で決着をつけたかったのであればもう1枚、2枚の攻撃的カードを切ると同時に前の枚数を増やすという勝負に出たはずだ。

 だが、2枚目のカードを切るまでには105分、つまり延長後半まで待たなければならなかった。最終ラインの1枚インディを削ってフンテラールを入れ4-2-4、あるいは2-4-4にシステムを変え、ようやく勝負に出た。あと1枚のカードを残したまま……。

 最後のカードは121分、下手したらそのままタイムアップのホイッスルが鳴ってもおかしくない時間帯に切られた。その最後のカードはゴールキーパーのクルルだった。そしていつものようにそのカードは決定的な仕事をしてオランダの準決勝進出が決まり、コスタリカの夢が散った。

 この采配をいくつかの視点から見ていたい。実はもっとも大きな決断はこの時間までラストカードを切らなかったという決断なのだが、それはコスタリカの戦い方とも関係するので後で触れよう。あの時間にゴールキーパーを入れたことに関してどういう判断が働いたのだろう?

 クルル自体が必ずしもPKのスペシャリストというわけではなく、これまで120分間ゴールマウスを守ってきたシレッセンの感情を考慮すると、そんなに簡単ではない判断だったと思う。しかし、クルルのセービング方向から一つの仮説が立てられる。ボールに触れられた、触れなかったはさておき、相手のキッカー5人が蹴った方向とクルルの跳んだ方向が一緒だった。つまりコスタリカの選手のPKの蹴る方向があらかじめ分かっていた可能性が高い。

 延長戦前後半を戦って肉体的にも精神的にも疲労しているゴールキーパー、シレッセンに代えてベンチで戦況をしっかり眺め、冷静に蹴る方向についてインプットする作業に集中することが出来た可能性の高いクルルの起用は、なるほど頷ける。

 オランダはこれまでの試合では積極的に動いていたが、ファン・ハールがコスタリカ戦に限ってはなぜ最後まで沈黙を貫いたのだろう?

 

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