ドイツで今も高く評価される元浦和監督 GM的視点も備えた智将が貫いた哲学とは?

モラス氏は、「学べることはものすごくあった」と述懐した【写真:中野吉之伴】
モラス氏は、「学べることはものすごくあった」と述懐した【写真:中野吉之伴】

「無名の国から選手を獲得する時のスカウティングの目も、すごく勉強になった」

「あの人が持っている医学とかクラブマネジメントとか育成構想だとか、学べることはものすごくあった。フライブルクでだったらアフリカの、しかもナイジェリアやカメルーンじゃなくて、ブルキナファソやマリといった無名の国から選手を獲得するルートを築き上げていました。そういう国から選手を獲る時のスカウティングの目とかも、すごく勉強になった。あとアウェーのスタジアムに行った時には、スタンドをパッと見て『このスタンドはだいたいいくらくらいかかる』とか、『これをこう改装すればクラブの収益をもっと増やすことができる』とか、そういうことが瞬時に分かるんです。今のユルゲン・クロップが、リバプールの新しいトレーニングセンターに関わっているのと似ているのかな。そういう感じの人だったんです」

 フィンケは魔法使いではなかったし、誰にも愛されるキャラクターでもなかった。日本の人たちの中には「気難しい指導者」というイメージが、一番強く残っているのかもしれない。だが本当のフィンケとは不器用で頑固だけど、誰よりもサッカーに自分のすべての愛情を注ぎこむ人だった。もう少しお互いに歩み寄ることができていたら、もっと違った化学反応が起こせたのかもしれない。それは誰にも分らないが。でもひょっとしたら今こそ、フィンケのような人材がJクラブには求められているのかもしれない。(文中敬称略)

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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