【ベスト4決定】 手札はすべてさらけ出したか…ファン・ハール戦術の奥行き
追い込んだ者が逆に追い込まれる、策士の誤算
しかし、試合が進むにつれ、コスタリカはオランダの狙いに対応し始めた。5バックが引き気味の状況を維持し、オランダのワイドアタッカーにスペースを与える危険を減殺しつつ好機をうかがう、持久戦に移行したのだ。初手で王手をかけられても、王を取られさえしなければ負けはしない。
途端に、オランダは攻めあぐねるシーンが多くなった。ボールは持てるが、コスタリカの人の波を効果的に縫うパスワークが鳴りを潜める。縦への仕掛けに向いた人材はいるが、コンビネーションプレーに長けた選手は少ない。
ワイドの選手、特にロッベンはこんな状況でも個の力を発揮していたが、スペースを得れず、スピードアップができないため、局面の駆け引きでファウルを得ることはできても決定的な崩しをもたらすまでには至らなかった。セットプレーを得ても、コスタリカのGKナバスを中心としたペナルティエリア内の堅守には定評があり、オランダが準備しているセットプレーの手筋のほとんどを寸断していた。
さらに、この試合では最初からプレーモデルをワイド変換にしてしまっていた。それゆえに、これ以上の戦術的な変化をもたらす策は、オランダに残されていなかった。相手を詰みに追い込んだ、と思ったら持ちこたえられてしまい、逆に自らが手詰まりに追い込まれてしまったようなものだ。結局、オランダは最後まで状況を打開できぬまま、延長戦終了の笛を聞くことになった。