リバプール「黄金期到来」の予感 CL制覇による“クロップの覚醒”と好敵手マンCの存在
リバプール優勝が思い出させた1990年のファーガソンのFA杯優勝
そんな絶対負けられない決勝を、なりふり構わず戦い勝った。するとクロップの放つオーラは、輝きを倍増させた。
【PR】ABEMA de DAZN、日本代表選手の注目試合を毎節2試合無料生中継!
この優勝は私に、1990年のアレックス・ファーガソンのFA杯優勝を連想させた。
低迷していたユナイテッドの改革に取り組んではいたが、タイトルには無縁で、解任の噂も出た4年目のシーズン。そこで勝ち取った初のメジャー・トロフィーだった。当時のFA杯の重みは大きく、この優勝がチームに決定的な自信を呼び込み、それまで眠っていたユナイテッドという“スリーピング・ジャイアント”を覚醒させ、その後の黄金時代の基盤とした。
今回のCL優勝はクロップとリバプールに、あの時のファーガソンとユナイテッドに似た、眠れる巨人の目覚めと黄金期の到来を予感させるのである。
少なくともリバプールで、あの決勝の内容を揶揄する声は聞こえない。
その証拠に優勝の翌日、リバプール市内で行われた優勝パレードには75万人のファンが沿道を埋め、まさしくイングランド北西部の港湾都市を真っ赤に染めた。
この人数がどれだけすごいことか。リバプールの人口が50万人で、前人未到の国内三冠を達成したシティの優勝パレードに集まったファンが10万人だったことを記述すれば、ことは明白になるだろう。これも今回の優勝が英国中のリバプールファンの心を揺さぶり、ホームタウンに呼び寄せた結果だ。
冒頭のモウリーニョ発言にあったように「この監督、この選手たち、そしてこのサポーターが、魂を通い合い、一体化して」今回の欧州制覇が達成された。それは負けられない試合を、相手を力でねじ伏せ、凡戦にしてまでつかんだ強者の非情な勝利だった。あの試合終了の笛は、これまではどうしてもチャレンジャーの立ち位置から抜けきれなかったリバプールが、真の強豪に豹変した瞬間だったのかもしれない。
このクロップの人気と求心力に加え、6度目の欧州チャンピオンとなって、来季のアンフィールドはますます赤く燃え上がるだろう。バルサを粉砕した魔物は、さらに強固になる。
となれば、ベスト16から4強まで続くホーム&アウェーの180分の戦いは、リバプールの望むところだ。グループステージを勝ち抜けば、決勝までの道は開かれたも同然である。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。