なでしこMF長谷川、オランダ戦に残る悔恨 「突き詰めて考えないといけない」
オランダの歓喜をかき消すブーイング それでも長谷川は甘えず、前を向く
守備から流れを引き寄せるきっかけを作った長谷川は、決定機でしっかりと仕事をした。1点ビハインドの前半43分、流れのなかでゴール正面に残っていた長谷川は、オフサイドライン手前のポジションでフリーの状態を作り上げ、FW岩渕真奈(INAC神戸レオネッサ)からのラストパスをしっかりとコントロール。グループリーグ第1戦アルゼンチン戦で迎えたチャンスと同じようなエリアだったが、目の前に人の壁があった初戦とは「全然違った」と振り返る。冷静にオランダのゴールへと蹴り込み、試合を振り出しに戻した。
「自分の得意な位置でした。オフサイドギリギリだったと思いますが、あのシーンでは本当にいいボールが出てきたので、最後に決め切るだけでした。あのシーンはチームの連動でできたシーンなので、みんなに感謝したいと思います」
同点弾が決まる前も、1点のビハインドを背負っているとは思えないほどオランダを苦しめていたなでしこジャパン。長谷川のゴールは、その流れを決定づけた。数で勝るオランダサポーターが手拍子を忘れるほどに、なでしこジャパンの選手たちは最終ラインから前線へきれいにボールを運び、そしてシュートを放った。しかし、クロスバーやGKサリ・ファン・フェーネンダールのスーパーセーブによって、ゴールを割ることができない。
不運なPKを与えたシーンで起きたフランス人観客によるブーイングは、タイムアップの瞬間、さらに大きな声量のブーイングとなって、勝者オランダの歓喜の声をかき消した。勝てるゲームを落としたという事実を、一瞬でも忘れさせるくらいの衝撃だ。それでも長谷川は甘えることなく「最後の場面で決め切ることができなかったということは、突き詰めて考えないといけない」と悔やみ、前を向く。
「世界をちょっとは驚かせた」――。そう感傷に浸ろうとする外野など、周回遅れにするようなスピード感が、そこにはある。なでしこジャパンと長谷川は、すでに東京五輪に向けたスタートを切っている。
(西森 彰 / Akira Nishimori)