【ベスト4決定】 90分間で見せた変幻自在のサッカーが今大会のドイツの強さ
フランスの攻撃にきっちり対応したドイツのうまさ
前半に見事なポゼッションを披露したドイツに残された時間は45分。守り切れば、8チームで最も早くベスト4進出が決定する。だから、後半は相手の狙いを消すことを優先した。前線から守るのではなく、DFラインを下げて守備をすることを選んだ。具体的には、アンカーのシュバインシュタイガーと中盤のケディラを横に並べることで、フランスのマイナスのクロスに対応した。
だが、冒頭で述べた通り、サッカーは相手のあるスポーツである。フランスも戦術に変化をつけた。ヴァルブエナは中央から左サイドに常駐するようになり、マテュイディはさらに前線を追い越す動きを実践し始める。さらに、SBのエブラも明らかに攻撃参加を増やすことで攻撃的な姿勢を押し出した。フランスの狙いは右サイドバックのラームだった。前半に高いポジショニングで攻撃の起点になっていた彼に守備にさせることで、攻守にラームサイドの制圧をはかった。
そのフランスの狙いに対して、ドイツもロングボールからのカウンター、セカンドボールを拾ってから相手を押し込める形で攻撃を仕掛けた。だが、アルジェリアと延長戦での体力的な影響からか、単発で終わってしまう。フランスはラームの大外からグリーズマンが飛び出したり、マテュイディとヴァルブエナのワン・ツーを決めたりと、自分たちが狙った攻撃を徹底して実行した。
守備面でさらなる変化を迫られたドイツだが、今大会はそこで柔軟性を発揮できるうまさを持ち合わせている。疲れの見え始めたクローゼの代わりにシュールレを投入し、前線からのプレスとパスを引き出すために新たなカードを切った。アルジェリア戦では見事に試合の流れを変えたシュールレ。この日はラームを助け、攻守にダイナミックな動きを見せてレーヴ監督の期待に応えた。
その後、フランスはレミーを入れて、右サイドからの攻撃にも取り組むも、中盤のキャバイエが交代でいなくなったことで、ドイツのプレッシングを交わすことができなくなった。最後に、FWジルーを入れてパワープレーに願いを託すもドイツが落ち着いて対応。時間と状況に応じて臨機応変に戦術を変えられる懐の深さを見せつけたドイツは、この試合であらためて今大会の優勝候補の一角であることを証明した。
取材・文/中野吉之伴 企画/COACH UNITED編集部
※ワールドカップ期間中、記事内で扱うシーンの一部はFIFAワールドカップ公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』のマルチアングル動画、選手毎のスタッツデータで確認できます。
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