【ベスト4決定】 90分間で見せた変幻自在のサッカーが今大会のドイツの強さ

明確な狙いを定めたフランスの攻撃

しかし、先制したのはドイツだった。前半12分にセットプレーであっさりゴールを陥れたのだ。この早い時間帯でのゴールが与える影響は、フランスにとっては少ないはずだった。だが、刻一刻と時は過ぎていくにつれ、リードされているフランスは徐々に苛立ちを大きくする。その原因は効果的にボールを奪えないことにあった。相手陣内の深いエリアまで飛び出せば、ノイアーがこの日右サイドバックの位置に入ったラームにピンポイントのロングパスを通す。センターサークル付近からプレッシングを行えば、プレッシングを外されてMFとDFの間のスペースを狙われたのだ。

この日、フランスのFW陣は自分の仕事以上のことをしなかったが、MF陣は自分の仕事以上のことをしようと努めた。しかし、周りの味方を巻き込むほどの勢いと推進力をもたらすことはできなかった。ボールを保持している選手やボールを受けようとする選手に気を取られ、彼らMF陣のポジショニングが消極的になってしまった。DFの前のスペースを埋めてドイツの攻撃に対応していたにもかかわらず、攻撃に関しては効果的な仕掛けまで行えなかった。一方で、ドイツは時間と共にポゼッションからカウンターへと攻撃のスタイルをシフトし、臨機応変に姿を変えた。

時間が過ぎていくと共に、先制に成功したドイツはワントップのクローゼを含めて守備に力を注いだ。相手がGKとDFの間のスペースを狙っているならば、DFラインを下げることで、そのスペースを消してしまえばいい。そのドイツの変化に対して、フランスもDFラインが下がる前に自陣の深い位置からでもロングボールを蹴ることで、自分たちの攻撃の狙いを継続させようとプレーする。

ロングボールによる攻撃は、速攻と表現してもいい。フランスの速攻に対して、ドイツの面々は自分のゴールに身体を向けながら帰陣することになった。当然、帰陣と同時にボール、味方、相手、スペース、ゴールを視野に入れながらプレーすることは難しい。フランスはその難しさを利用するために、マイナスのクロスを多用する攻撃を仕掛けた。

 

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