“英雄不在”のチームはなぜ勝てたのか? コロンビアを支えた22歳の10番
ファルカオがいればそのポテンシャルが引き出されなかった可能性も
W杯開幕を5カ月後に控えた1月。コロンビア、そして世界に激震が走った。コロンビアの絶対的エースであるFWラダメオ・ファルカオが左膝を負傷し、全治6カ月と診断されたのだ。ファルカオは絶望的とされたW杯出場に向けて必死のリハビリを行った。W杯の登録メンバーには選出されたものの、最終メンバーに彼の名前はなかった。
ファルカオは所属クラブのモナコでハメスとコンビを組んでいた。ハメスがパスを出し、ファルカオが決める――。黄金コンビはコロンビアがW杯で勝ち上がるための生命線でもあった。だが、頼りになる大エースはいなくなった。それにより、ハメスはW杯ではフィニッシャーとしての側面を強めることになった。
ドイツのメスト・エジルのように華麗なパスで攻撃を操りながら、ゴール前ではロナウドやメッシのような決定力を発揮する。コロンビアの10番は現代サッカーのアタッカーに求められる理想像を体現してみせた。
もしかしたら、ファルカオがいればコロンビアはブラジルに勝っていたかもしれない。その一方で、ファルカオがいればハメスのポテンシャルがここまで引き出されたかはわからない。
試合後、ハメスはピッチで泣いた。ブラジル戦ではフェルナンジーニョに密着マークされ、何度もピッチに転がされた。自分が出したらラストパスでファウルを誘い、PKを落ち着いて決めたが、チームを勝利に導くことはできなかった。
大舞台での悔しさはスター候補を一段上に引き上げることがある。ハメスはサッカー界の新たな顔になるのだろうか。ユーロ2004の決勝でギリシャに敗れ、同じように涙を流し、“クライベイビー”とからかわれながら、世界一に上り詰めた本家のように。
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北健一郎●文 text by Kenichiro Kita
※ワールドカップ期間中、記事内で扱うシーンの一部はFIFAワールドカップ公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』のマルチアングル動画、選手毎のスタッツデータで確認できます。
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