ライバルであり最大の理解者、香川に叩きつけた挑戦状 清武が示したトップ下と前線の距離感
2点目を生んだ盟友・金崎との絶妙な距離感
だが、このシーンで得た感覚と距離感は、その3分後に見事に生かされる。前半26分、敵陣右サイドで今度は長谷部誠の縦パスを金崎が受けてワンタッチで前を向くと、そのすぐ横に位置していた清武は一気に相手最終ラインの裏へ走り出す。そして金崎からのスルーパスをワンタッチで中央の武藤にクロス。この連携で本田圭佑の2点目が生まれた。
「スペースはなかったです。でもやっぱり数少ないチャンスで、何かできればいいかなと思っていました」
そんな清武のプレーを、試合後のハリルホジッチ監督も「守備を固めた相手に、かなり良い組み立てを見せてくれた」と称賛。セットプレーのキッカーとしても精度の高いボールを次々と配球していた背番号13は、「トップ下」のポジションが決して、香川の聖域ではないことをしっかりと証明してみせた。
グループリーグで1勝もできずに敗れ去った昨夏のブラジル・ワールドカップ直後、2018年のロシア大会に向けて「次は自分たちの世代がやらないと」と語っていた清武。アジア予選の舞台で、同じ1989年生まれのライバルと切磋琢磨していく決意を示す試合になったのは間違いない。
もっとも、そんな香川とも、日本代表やセレッソ大阪では絶妙なコンビネーションを奏でてきた。ライバルでもあり、最大の理解者でもある。ドイツを熱狂させる2人が同時にピッチに立ち、フィールド上で共鳴する様を、ロシアへ続く道のなかで見てみたいと願う人も多いはずだ。
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サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images