“寡黙な男”イニエスタが主将を託される理由 一挙手一投足に込められるリーダーシップ

的確なタイミングで檄を飛ばし、交代後も座ることなく試合を見守る姿

 決勝点を奪った直後、立て続けにCKを与えてしまった場面では、それまで声を荒げることのなかったイニエスタが激しく手を叩き、チームメートのポジショニングを厳しく指示していた。得点の喜びに浮き足立ち、直後に失点を喫してしまうというのはサッカーではよくあるケースだが、百戦錬磨のイニエスタは、自身のスーパーゴールでやや弛緩した空気が流れていたチームを締めるため、的確なタイミングで檄を飛ばしていた。

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 また、この日イニエスタは早めの交代が予定されていたはずだったが、久しぶりの先発とは思えぬ強度とパフォーマンスで、結局終了間際の後半45分までプレーした。その際も、復帰戦で90分を走り抜いて疲弊していたにもかかわらず、アディショナルタイムの5分間、座って休まずにベンチを飛び出し、立ちっぱなしでチームを見守っていた。終了を告げるホイッスルが鳴り響いた瞬間には、フィンク監督に飛び付いて勝利を祝った。キャリアを通して何百勝も挙げてきたイニエスタが、誰よりも勝ちにこだわりを見せた姿だった。

 試合後には、今季初ゴールとなった自身の決勝弾について「素晴らしいゴール」だったと振り返りつつも、「というのも、勝ち点につながったという意味で、素晴らしいゴールだったということ」と、そのワールドクラスの華やかさではなく、勝ち点3奪取に貢献した得点となったことの重要性を説いていた。バルセロナやスペイン代表でも長きにわたり主将を務めてきたイニエスタ。世界最高のチームからキャプテンバンドを託されるだけのリーダーシップを、垣間見ることのできる一戦になった。

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