【W杯詳細分析・フランス-ドイツ】フランスの「一体感」を打ち破ったドイツの「コレクティブ」なサッカー

ドイツが見せた「コレクティブ」なサッカーと相手より一人分多い走行距離

 そんなフランスにドイツは試合を通して陣形をコンパクトに保ったままいわゆるコレクティブなサッカーを90分間実践した。コレクティブなサッカーを翻訳すると組織的な、規律を持った集団的なサッカーとなり、一体感と非常に似たニュアンスを持つ。しかし、一体感がより意識的な部分を強調するのに対し、コレクティブなサッカーはサッカースキルが強調される。

 次にあるイラストを見てほしい。

コレクティブ

  さらにコンパクトさの中で各選手の立ち位置のバランスを見るとフランスの方は大きなギャップがあるのが分かる。フランスはドイツのコンパクトな陣形に入る込むことが出来ず裏を狙う攻撃を多用したが、一方のドイツは奪ったボールを中央付近で前向きにボールを持つことが多かった。それは「一体感」はあるが「コレクティブ」ではなかったフランスの組織のギャップを突けたからだ。

 この試合ドイツの実プレー時間における総走行距離は76,956m、フランスは70,703mだった。ポゼッション率が50%対50%と互角だったから、その差6,253mはほぼ選手一人分の運動量の差だ(データ出所:FIFA.com)。より狭い(コンパクトな)エリアで一人選手が多い状況を想像してみると分かりやすい。言うまでもなく相手は非常にやりづらさを感じたことと思う。

 フランスは一体感という意識の中で、奪ったボールを前に運ぶところまでは相手よりも早く出来ていることが多かった。しかしそうした縦のボールが出た後の最終ラインの押し上げといった部分においてコレクティブではないことが多く、逆に攻撃から守備への切り替えの際に問題が起きることが多かった。一方のドイツは前に行く時、後ろに戻る時の共通理解があり、共にいるべきところに向かって全員の体が動き出していた。結果、ドイツは前半13分のフンメルスのゴールによって1-0の勝利を手にした。

 1954年に始まったワールドカップにおける2チームの戦いはいつの時代でも見応えがあったはずだ。ドイツはフランスに勝った後の試合では疲れ果ててしまうためか1982年、1986年と2回とも準優勝に終わっている。

 今回はフランスに勝った後、もう一つの優勝候補という高い壁が待ち構えている。決してコレクティブではないが、圧倒的な個とファイティングスピリット、そして勝つために限りなく現実的な方法を取るブラジルとの一戦だ。その高い壁を乗り越えることが出来た時サッカーの王国で新しい君主の誕生を見ることになるはずだ。

analyzed by ZONE World Cup Analyzing Team

データ提供元:opta / fita.com

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

 ※ワールドカップ期間中、記事内で扱うシーンの一部はFIFAワールドカップ公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』のマルチアングル動画、選手毎のスタッツデータで確認できます。
詳しくは、「LEGENDS STADIUM 2014 – FIFAワールドカップ公式動画」まで

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