目の前の試合が常にラストチャンス 浦和の守護神が見せる笑顔の裏の野心
金崎との「大分コンビが楽しみ」
岡田武史監督が率いた2010年の南アフリカ・ワールドカップは、直前でメンバー入りを逃した。アルベルト・ザッケローニ監督が率いた14年のブラジル大会は、大会直前のテストマッチだったザンビア戦で、3失点を喫した。自らが悔しい思い出の一つと語る試合だ。世界最高峰の舞台に立つためのオーディションの場で、結果を残せなかった悔しさが胸の中に残っている。だからこそ、西川にとって目の前の試合は常にラストチャンスなのだ。
選手個々について言及しながら、メンバーを発表するのが恒例になっているバヒド・ハリルホジッチ監督だが、GKの発表ではメンバー外になっている川島永嗣(無所属からスコットランド、ダンディー・ユナイテッドへの加入が濃厚)に対するコメントに多くの時間を割いた。ハリル監督の頭の中に、「川島」の名前が大きなものとして存在していることは間違いない。だからこそ、その存在を小さくして「西川」の占める割合を増やしていくためにも、アピールが必要だと捉えている。
一方で、西川には今回の代表活動で純粋に楽しみな要素も一つある。それは、07年から09年まで大分トリニータでともにプレーした、FW金崎夢生(鹿島)が代表に復帰し、同じチームでプレーできることだ。
「夢生が入っていたことに驚きはなかった。結果を出しているし、もともと能力が高くてメンタルも強い。また大分コンビで一緒にやれるのは楽しみ」
西川は笑顔で、かつてのチームメートと戦えることを喜んだ。標的を遠距離から射抜く、スナイパーのような西川の低弾道パントキックに、金崎が一気に抜け出すというシーンも期待できるはずだ。終始、トレードマークとなったビッグスマイルで語った“笑顔の守護神”は、その胸の内に熱い思いを秘めて日本のゴールマウスを守っていく。
【了】
轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images