3バックシステムで最も恩恵を受けた日本代表選手は? 英記者が解説「渋滞が解消した」
南野不在で中島のカットインが活性化 それでも手薄な攻撃で「日本は人員不足」
日本代表は5日、国際親善試合でトリニダード・トバゴと対戦し、0-0で引き分けた。“令和初戦”となった試合で森保一監督は、現体制15試合目にして3バックシステムを初採用。試合を通して主導権を握るも、相手の粘り強い守備を崩すことができず無得点に終わった。
これを受け、かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を6大会連続で取材した英国人記者のマイケル・チャーチ氏は、3バックシステムについて、明確な狙いを可視化することができたことに加え、中島翔哉の本領がより発揮されていたことを指摘した一方、両ウイングバックの攻撃参加が不十分であったことを主張。手厚い攻撃を仕掛けられなかったことから、「日本は人員不足であったように見えた」と指摘している。
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ノーゴール、久保建英の不在――。5日の夜に豊田スタジアムで行われたトリニダード・トバゴ戦は、原稿にすべき事象がほとんどないまま0-0のドローに終わり、観る者をワクワクさせるような場面はほとんどなかった。3人のセンターバック(CB)を配置し、生粋のプレーメーカーを設けない森保一監督の決断による戦術的調整は、コパ・アメリカに向けた指揮官のチーム作りの考えを可視化させた。しかし、ブラジルで対戦するチームのほとんどが、この日のパフォーマンスを見て日本を警戒することはないだろう。
南野拓実をベンチに置き、大迫勇也の背後のスペースを空ける決断は、中島翔哉と堂安律にカットインさせることを意図した戦術だったのと同時に、4バック時にはサイドバックを務める長友佑都と酒井宏樹をより高い位置へ攻撃参加させるため、ワイドでの自由を解放させるためのものだった。
中島は、確かに南野不在の恩恵を最も受けているように見えた。カタールで活躍するウインガーが相手DFに切り込む際、ザルツブルクのアタッカーがベンチにいることでピッチ中央に起きていた渋滞が解消されたためだ。
中島というトリッキーなウインガーを寄せつけないようにすべく、トリニダード・トバゴの守備陣は徹底的に応戦したものの、それでもオン・ザ・ボールで最大の脅威を与えたのは、この24歳だった。前半の終わり頃に関しては、中島はたった1人で対戦国を壊滅させようとしているように見えた。彼のFKはクロスバーを叩き、周囲のフォローなしに相手守備陣を翻弄していた。
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。