U-20日本代表、“結束力”が引き寄せたグループリーグ突破 逆境をはね返した若き侍たち
1人がみんなのために動き、みんなが1人のために動くチームへ
戦前は、ベストメンバーではないとしてもエクアドル、メキシコ、イタリアといった世界の強敵たちと同組になり、主軸を担う選手たちが複数人外れた日本には不安要素が先行していた。攻守の要を失い、選ばれた選手たちのほとんどがJリーグで出場機会を失っている。今大会を通してチームが成長していかない限り、突破は難しかったはずだ。
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ただ、この3試合だけを見ても日本の成長には目を見張るものがある。チームとして大事にする“泥臭く戦う心”を備え、どんな相手にも自信を持って戦うことを遂行。特にメンバーを変えながらでも、チームの根幹は変えずに勝ち点を得ることができたことは大きい。チーム全体でハードワークを続け、屈強なフィジカルを持つ相手に対しても球際で怯まない。1人がみんなのために動き、みんなが1人のために動く。ベンチにいる選手たちも含めて、誰もがチームのために戦っている。チームの結束力がグループリーグ突破を引き寄せた。
そんなチームの成長に影山雅永監督も目を細めている。
「かけがえのない大会に参加させていただいているなと思います。世界から勝ち上がってきているナショナルチームと戦う、それに対してモチベーションや熱い気持ちを持たない選手がいるわけがない。そのなかで自分を律し、勇気を持ってパスを送る、運ぶ、大胆に動き出す、そんなことを1試合ずつ重ねてきた。自信になるところもあれば、パススピードのようにもっと上げなければいけないということもある。そんな要素を感じながらさらに試合ができるというのは、こんなに喜ばしいことはないですね」
“優勝”という目標が見えてきたことで、決勝トーナメントではどのチームもレベルが一段上に上がるだろう。それは選手たちも分かっている。
中盤で舵を取るMF伊藤洋輝(名古屋グランパス)が「ここからトーナメントなので、戦い方の上手さはより必要になると思う。ゲームのコントロールは常に意識してやっていきたい」と次を見据え、ピッチ内外でムードメーカーとして存在感を見せるDF菅原由勢(名古屋)は「本当に次が勝負というか、長年超えられない壁だと思う。今の僕たちはそこを超えられるという自信があるし、実力もあると思うので、しっかりと準備をしていきたいなと思います」と前を向く。
決して簡単ではない。ただ、それでも何かを起こす可能性をグループリーグで示した。一歩ずつ成長を遂げている若き日本代表は、ラウンド16の舞台であるルブリンで、さらに上への扉を切り拓きにいく。
林 遼平
はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。