ブラジルをあと一歩のところまで追い詰めた、チリ代表の身体の動かし方
伸ばす筋肉は強く疲れにくい
鬼木さんはこう補足します。
「“伸ばす筋肉”は強く、疲れにくいと言われています。つまり、お尻を上げて、背筋をシュッと伸ばすような体勢をつくることで、結果的に強く、疲れにくい筋肉を使うことができるのです。一方、“曲げる筋肉”は、思ったよりも力が出にくく疲れやすい、と言われています。出そうとすればするほど、より大きな力を出さなければならず、それを繰り返すと疲れてしまいます。プレッシングをかける瞬間に、お尻が下がっていると自ずと背筋も丸く、猫背のようになりがちなので、結果として地面を蹴るように両脚の筋力に頼ってスタートを切らなければならず、疲労が蓄積しやすいのです。この差は、90分トータルの積み重ねとして大きな差になると思います」
また、鬼木さんの見立てでは「格上と対峙するときには、たいがい無用な力が入って身体が力んでしまい、それによってお尻が落ちて背中も丸まり、曲げる筋肉を使うことになりがち」とのことですが、今大会のチリの選手にはそういうネガティブな素振りはほとんど見受けられませんでした。
「それはグループリーグの素晴らしい戦いで世界王者スペインを撃破し、その自信からブラジル相手にもまったくひるまずに勇敢な戦いができた、ということが言えるのかもしれません」
チリの人々は、真面目で集団性に優れおり、日本人に近い国民性を持つと言われています。また、その選手たちの平均身長は今大会の出場参加国のなかで最下位でした。同じように欧米の列強に対してサイズで劣り、“集団的に前から奪う攻撃サッカー”を標榜していた日本が、今大会のチリの戦いぶりから学ぶべき点は多いのではないでしょうか。
取材・文/杜乃伍真 企画/サカイク編集部
※ワールドカップ期間中、記事内で扱うシーンの一部はFIFAワールドカップ公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』のマルチアングル動画、選手毎のスタッツデータで確認できます。
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