ブラジルをあと一歩のところまで追い詰めた、チリ代表の身体の動かし方
骨盤をリセットするとプレッシングで疲れない!?
「体重移動」ではなく「重心移動」の重要性を説くフットボールスタイリストの鬼木祐輔さんは「骨盤(全身)のリセット」にそのヒントを見出しています。
「彼らは90分のなかで、意識している・していないにかかわらず骨盤をリセットする動きを何度も入れているんです。守備をするスタートを切らないといけないと感じた瞬間に、少しだけお尻をあげるようにして、背筋をシュッと伸ばすような動作を入れている。そうすることで骨盤がリセットされるので、骨盤の根元に埋まっている両脚がフリーの状態になって動きやすくなるんです。イメージとしては、身体の中心=重心が前へ先行して、その後追いとして両脚がくっついてくるような運動ができているということですね」
たとえば、チリが2対0で退けたスペイン戦の85分。スペインのセンターバックが自陣ペナルティエリア内でボールを持ち、左右どちらに展開しようかと覗っているシーンでは、チリのボランチ、マルセロ・ディアスがミドルサード付近まで前へ顔を出して、前から連動してプレッシャーがかけられるように相手の様子を覗っています。このときディアスはボールホルダーを見ながら、トンという感じでお尻をあげて、シュッと背筋を伸ばし、左右どちらに展開されてもすばやく追い込めるような準備をしています。そして、ボールが出された瞬間に移動して連動したプレッシングとその強度を保つことができています。85分という疲労が蓄積しているだろう時間帯にもかかわらず、です。
「チリの選手たちは、このシーンで瞬間的にお尻をあげ、背筋をシュッと伸ばすようにして骨盤(全身)をリセットしています。お腹の下の辺り=重心を高く保って守備ができているので、両脚が地面に居着いておらず、相手の横パスが流れた瞬間に反応して、重心を先行させながらスムーズに前へと身体を動かすことができているんです。だからハードなプレッシングを90分間続けることができたのです」
もしもこれが、お尻が下がった状態のまま、そのために両脚で地面を蹴るようにしてプレッシングのスタートを切らなければならず、つまり、筋肉の力で踏ん張るように前へ進む移動(体重移動)を繰り返していたらどうでしょうか。果たして90分間、あれだけの激しい動きを続けることはできるのでしょうか。