岡崎慎司がレスターで愛された理由 英国に美しく順応した「常にタンクを空にする男」

岡崎とヴァーディの2トップでプレミアリーグを制覇【写真:Getty Images】
岡崎とヴァーディの2トップでプレミアリーグを制覇【写真:Getty Images】

ヴァーディと築いた“縦関係”の2トップ

 岡崎はいつも試合開始直後から、後半残り10分で1点を追いかけるチームの選手のようなインテンシティーでボールを追いかけた。あんな走りでは、とてもじゃないが90分持つわけがない。しかし、我らが日本代表FWはそんなことはお構いなしだった。

 確かに「ミスター60分」とチームメートにからかわれるのは本意ではなかっただろう。しかしセンターフォワードでありながら、岡崎は味方が守勢に回れば常に中盤を助け、全力疾走でプレスをかけた。

 そうしなければ、レギュラーになれなかったという側面もあった。

 岡崎加入1年目の15-16シーズン、FWジェイミー・ヴァーディが大化けした。特にシーズン序盤の8月29日に行われた第4節ボーンマス戦(1-1)から11月28日の第14節マンチェスター・ユナイテッド戦(1-1)にかけて、FWルート・ファン・ニステルローイが03年に記録し、更新不可能と見られていたプレミア10試合連続ゴール記録を11試合に塗り替える大活躍で、レスターを奇跡のレールに乗せた。

 ここまで大爆発すると、2トップの一角はヴァーディで確定した。すると岡崎のチーム内ライバルは、ポストプレーや空中戦で存在感を見せ、前年の14-15シーズンにリーグ戦11ゴールを決めてレスターのチーム得点王に輝いたFWレオナルド・ウジョアとなった。

 そこで岡崎は、それまでのレスター2トップが見せていた“横の関係”を、自らをヴァーディの背後のトップ下に沈めて“縦の関係”に構築し直し、独自のプレーを見せ始めた。

 絶好調のエースと中盤の橋渡し役となり、それと同時にカウンター攻撃を主体にしたチームの宿命で、相手にボールを奪われる頻度が高い展開の中で、最前線からすぐさま敵のセンターバックやアンカーにプレスをかけるアグレッシブな守備にも取り組んだ。

 結局、この岡崎のプレースタイルがはまった。このプレースタイルこそレスターに突然変異を生み、奇跡の優勝に不可欠なピースとなったのである。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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