岡崎慎司がレスターで愛された理由 英国に美しく順応した「常にタンクを空にする男」
3カ月の付き合いだったロジャーズ監督も賛辞 「人間として素晴らしい」
「まず人間として素晴らしい。練習場で蹴られて倒れこんでも、楽しくてしょうがないとばかりに笑顔で立ち上がってくるんだ。そんな彼のサッカーに対する愛情が、シンジをこれだけの選手にしたのだと思う。英語では『エンプティー・ザ・タンク』(タンクを空にする)という言葉で全力を尽くすことを表現するが、シンジはまさに常にタンクを空にする選手だ。彼は試合のピッチ上だけではなく、練習場でもいつもタンクを空にするまで走る。連日のハードワークを自分に課し、それをエネルギッシュに、素晴らしい情熱でこなしている。短い間ではあったが、彼と一緒にやれたことは私にとって光栄だった。そんな岡崎はレスターのレジェンドである。サポーターはこの先、どんなことがあっても、彼がこのクラブのために全力を尽くした姿を忘れることはないだろう」
冒頭でリッチーが私のインタビュー記事に、「プレミアに美しく順応したオカザキ」という見出しをつけたが、同時にこれほどプレミアで愛された日本人選手もいない。なぜなのか――それがこのロジャーズ監督の言葉で分かった。それは岡崎が、“常にタンクを空にする男”だったからだ。
サッカーの母国、イングランド。この国のサッカーには命知らずの男たちがボールを挟んでぶつかり合った、いにしえのフットボールの香りが今も色濃く漂う。だからこそファンは、この格闘技さながらのサッカーで、まず選手に当たりを怖がらずボールに向かう勇気を求める。もちろん、常に全力疾走でボールに向かう。それがこの国のサッカーで、全力を尽くすということだ。
イングランドのファンは技術的なミスには寛容だ。しかし当たりを怖がって、相手と五分五分のルーズボールに飛び込まなかったり、ラインぎりぎりまで全力疾走でボールを追わない選手には、味方であろうと容赦なくブーイングを浴びせる。
岡崎はそういった全力を求めるプレミアファンの基準の、さらに上を行くプレーで、レスター・サポーターの熱烈な支持を得た。
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森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。