岡崎慎司がレスターで愛された理由 英国に美しく順応した「常にタンクを空にする男」
“伝説の一部”となった岡崎、誰もが今季限りでの退団を惜しむ
「Okazaki ‘Beautifully’ Adapted To The Premier League」(プレミアリーグに美しく順応したオカザキ)
5月20日、こんなタイトルの記事がレスターの公式サイトに掲載された。私がリチャード・メロー広報官の取材に応じたものだ。10日に今季最後となる監督定例会見に出席した際にインタビューを受けた。天気の悪い英国では珍しく雲一つない五月晴れの日で、ちょうど3年前、レスターのプレミアリーグ優勝が決まった直後の定例会見も、こんな晴天の日だったことを思い出した。この2日前の8日、日本代表FW岡崎慎司の今季限りでの退団がレスター公式サイトで発表されていた。
この4年でメロー広報官とは、「リッチー」「マサ」と呼び合う仲になっていた。レスターと同じ青のユニフォームを基調とした“ブルーズ”でも、本当はエバートン・ファンであるリッチーは、私のインタビューを終えると「シンジが退団すると本当に寂しくなるな」と、呟くように言った。試合の取材申請を担当するマリーには、「シンジが退団したら、もうレスターには来ないの?」と聞かれた。
阿部勇樹(現・浦和レッズ)の所属2季目の冬にレスターの広報官となり、今では監督付きに出世したアンソニーには「レスターの試合に来たければ言ってくれ。いつでも招待するから」と声をかけられた。また英地元紙「レスター・マーキュリー」の主任ライターであるロブ・タイラーには、「シンジがいなくなり、君たち日本人報道陣も来なくなると、優勝が本当に遠ざかったように感じて、センチメンタルな気持ちになるよ」と言われた。
しかし、こうしたインタビューを受け、クラブ関係者や地元紙ライターと心が通ったのも、岡崎がレスターでその名を轟かせたからだ。加入初年度の2015-16シーズン、残留争いをすると見られていたチームが突然変異を起こし、“優勝オッズ”5001倍の奇跡の優勝を果たして、岡崎はクラブの伝説の一部となった。
そのことは、就任わずか3カ月で岡崎の退団に立ち会ったブレンダン・ロジャーズ監督の言葉からも明確に伝わってきた。
定例会見後、私を含めわずか5人の地元記者によるロジャーズ監督を囲む懇談会に出席した。正直、たった3カ月の付き合いでどれほどのことが言えるかと高をくくっていた。しかし岡崎について聞くと、ユルゲン・クロップ監督が就任する前のリバプールを率い、セルティックで2年連続3冠を達成した知将は驚くほど饒舌になった。
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森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。