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「ジャパンウェイ」の追求とW杯の奇跡 歴史的勝利の裏にあった“監督を越えた瞬間”
「外国人コーチは意外とイエスマンが多かった」
「スタッフたちに対しても厳しかったですからね。面白かったのは、外国人コーチは意外とイエスマンが多かったです。反対に、一番逆らったのは沢木(敬介/コーチングコーディネーター)ですよ。ワールドカップ中にも、途中で『帰れ』って言われたくらいですから(笑)。
南アフリカ戦で面白いプレーがありました。ラインアウトからサインプレーで五郎丸(歩)がトライしたシーンがあったんです。このサインプレーというのは沢木が考えたものですが、実はエディーは駄目だって言ったんです。使えない、試合では成功しないと。でも沢木は練習で成功しないのはディフェンスが分かっているから。分からないチームには絶対効くと主張していました。それで見事に成功したんです。
あと面白いのは、立川(理道)が(アマナキ・レレイ・)マフィにすごい長いパスを放ったシーンがあるんです。日本人の長いパスは山なりになってしまって、インターセプトされやすかったから、エディーは長いパスを禁止してたんですよ。ですけど、その時は見事なパスでトライにつながりました。これはエディーに逆らったというより、選手やコーチたちも含めて、みんながエディー・ジョーンズを超えてきたんですよ。それがチームの強さだったと思います。4年間やってきて、コーチの言いなりばかりではなくて、コーチをさらに超えて先に進んでいったと」
他の本などで多くが語られているため、ここでは繰り返さないが、エディーと選手たちの間には相当な緊張関係があった。サッカーの日本代表で、2018年ロシアW杯直前にバヒド・ハリルホジッチ氏の解任に至るプロセスと、エディーと選手の緊張関係が同質のものかどうかは分からない。そして、エディーと最後まで一緒に戦ったラグビーも、監督を解任して挑んだサッカーも、結果を残しているので、どちらも成功だったと言える。
しかし、共通するのは、普段は主体性に欠けていた日本人選手たちが、自身の判断に自信を持ち目覚めた時の可能性を示していることだ。そして同時に、それを引き出すには日本の場合、相当な緊張関係を覚悟しなければならないのではないか、ということだ。