日本代表初選出の19歳“新世代GK” 「日本トップ3」の技術的評価と怖れなき強心臓

大迫が備える類稀なメンタルの強さ

 キャッチできるということには二つの利点がある。一つは、相手の攻撃をそこで終わらせられること。もう一つは、攻撃の起点となれることだ。

「GKがはめるグローブは、守るというよりもボールを奪いにいくという攻撃のためのツール。奪ってしまえばマイボールになり、彼のストロングポイントであるロングスローとキックのフィードを発揮しやすい。なのでキャンプからずっと、ディフレクション(弾いて方向をそらす)のスキルよりも、キャッチしてマイボールにしていこうという意識づけをやってきました」(澤村コーチ)

 広島が今、得点力不足に陥っていることで大迫の攻撃能力は見過ごされがちだが、足もとの技術は悪くなく、つなごうと思えばしっかりとつなげる。ミドル・ロングレンジのキックは抜群に鋭く、そういう意味ではモダンであり、マンチェスター・シティGKエデルソンのような攻撃の起点としても十分に機能する資質を持つ。

 そしてそれ以上に注目されるべきは、スローイングだ。プロ野球の外野手としても成功したのではないかと思えるほどの「レーザービーム」で、ボールは一気にハーフウェーラインを越えていく。大迫のスローが、例えばFWパトリックやDFエミル・サロモンソンのようなスピードのある選手により多く通れば、広島は今よりも得点機を量産できるだろうし、相手もラインを簡単には上げられなくなる。

 ただ、大迫の未来に最も期待できるのは、技術や戦術的な部分ではない。例えばハイボールのキャッチにしても、186センチという高さは世界レベルで見れば小柄であり、高くて上手くて強いFWと対峙した場合は厳しくなるかもしれない。だが、きっとそれも克服できると信じられるのは、大迫が類稀なメンタルの強さを持っているからだ。

 メンタルが強いか強くないか、それはチャレンジ精神に現れる。大迫は開幕の清水戦でハイボールに対するミスを犯した後も、大邱戦の凡ミスの後も、平然とエアバトルに挑みキャッチする。弾くことなど全く頭にない。逃げることなど微塵もない。失敗しても、次にチャレンジすればいいんだ――。そんな意識が、特別でもなんでもなく、ごく自然に大迫の中で根付いている。

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