神戸の迷走と「助っ人依存型」の限界 時代錯誤に映る“中国流”強化のアプローチ
ACL浦和戦で顕著だった、北京国安の助っ人選手と中国人選手の分離
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージ最終節で、浦和が同勝ち点の北京国安を3-0で圧倒し決勝トーナメント進出を決めた。北京国安は国内リーグで開幕から10連勝と破竹の勢いだったようだが、完全な“助っ人依存型”のチームで中国人選手たちとの分離が顕著。MFにレナト・アウグスト(ブラジル)、ホナタン・ビエラ(スペイン)、FWにはセドリック・バカンブ(コンゴ民主共和国)を擁し、ほぼこのトライアングルだけでボールを回す。
浦和のオズワルド・オリヴェイラ監督は、「R・アウグストとビエラに厳しく」と指示したそうだが、逆に2人からバカンブへのパスコースを断てばリスクが遠退く状況で、浦和はゴールシーン以外にも5度ほど決定機を築く快勝だった。
北京国安を指揮するドイツ人のロジャー・シュミット監督が、「まだ細部に足りないことが多い。学ぶことの多い試合だった」と振り返るように、総じて中国勢のチーム作りは似ていて、助っ人トリオの力が傑出し、中国人選手たちがまったく共演できていない。R・アウグストやビエラが最終ラインの前まで降りてボールを受けると、中国人選手に指示を出して動かすシーンが何度も見られた。
皮肉にもJリーグ勢4チームでは、国内で2連覇中の川崎フロンターレだけがグループステージで敗退したわけだが、その川崎を抑えて決勝トーナメントに進出した上海上港と北京国安との端的な違いは、フッキ、オスカルが示した個の破壊力だった。逆に北京国安のシュミット監督も、かつて広州恒大を率いたルイス・フェリペ・スコラーリ監督も認めていたように、歴史で上回るJリーグは国産選手の育成で中国に大きく先んじている。北京国安を下した浦和で軸を成すのは日本人選手たちで、こうした状況を考えれば、ヴィッセル神戸式のアプローチが成功し難いのは容易に推察できたはずだ。
例えば、直近で神戸のアンドレス・イニエスタ、ルーカス・ポドルスキが揃って出場したのが、4月14日のJ1リーグ第7節サンフレッチェ広島とのアウェー戦(2-4)だが、チーム全体の総走行距離では相手より約10.6キロメートルも少なかった。もちろんその分、彼らがボールを持てば高い精度の創造性を見せるわけだが、当然往年のスピードやハードワークは望めない。2人が不在だった5月18日の第12節、アウェーの横浜F・マリノス戦は、フィールドの助っ人選手が揃えば弾き出される韓国代表GKキム・スンギュの奮闘も虚しく、1-4の完敗だった。
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加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。