【現地取材記者対談②】ザックジャパンはなぜ敗れてしまったのか 逆境を打破する雰囲気が見られなかったチーム
大久保が入ったことの化学変化とは
北 大久保についても触れておきましょう。彼はラストピースとして入りましたが、結果的にはかなり重要な存在になった。3試合での出場時間も長かったですし。大久保のパフォーマンスは良かったとは思うんですが、それによってチーム全体が良くなかったかというと……。
佐藤 他の選手のように積み上げてきたものがないから、大久保は自分の感性に頼ってプレーするしかない。ザックはそういうところは目をつむってでも、大久保のミドルシュートや得点力にかけたんだろうね。
北 ザックは大久保を入れた時点では、これだけ長い時間起用することはイメージしていたんですかね?
佐藤 どうなんだろう。指宿合宿、アメリカでのテストマッチで悪くないという感触を得たから起用したんだろうけどね。
北 大久保が重用された一方で、これまでザックジャパンでバックアップだった選手の多くがブラジルのピッチに立てませんでした。今大会は23人中16人。フィールドプレーヤーでいえば5人が出場していません。選手交代も含めて限られた戦力で戦っていた印象があります。チームの雰囲気はどうだったんですか?
佐藤 みんな出たいという気持ちはあった。でも、そこでわがままを言ったり、ふて腐れたりしたらダメだというのはチーム内にはあったんじゃないかな。酒井豪徳なんかは前回の南アフリカにサポートメンバーとして帯同して、大会直前にレギュラーを外された中村俊輔や楢崎正剛のことも見ているからね。あと、今回のバックアップは次も狙える若い選手が多かった。ドイツW杯のときみたいに、中堅どころの選手たちがサブに回っているわけじゃなかったから、チームマネジメントはやりやすかったと思う。
北 性格的にもグループの輪を乱さない、輪を大事にできるというのはザックの選考基準にもあったと思います。ただ矛盾するようですが、どこか大人しいなという印象も受けました。うまくいかないときだったからこそ、それを打ち破るような雰囲気がなかった。
佐藤 だから大久保を入れたという面もあるんだろうね。大久保以外にそういうところを持っている選手がいなかった(続く)。
北健一郎●文 text by Kenichiro Kita
※ワールドカップ期間中、記事内で扱うシーンの一部はFIFAワールドカップ公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』のマルチアングル動画、選手毎のスタッツデータで確認できます。
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