バイエルン最強コンビが刻んだ美しき時代 7連覇の歓喜と涙に彩られた「夢のような終幕」

ロッベンが最後の舞台で貫いた「子供のように走り回る」プレー

 ロッベンは、バイエルン最後の選手として出てきた。足早にバスへと急ごうとする。「みんなバスで待ってるんだ。もう十分に話しただろ?」と。それでも最後まで残っていた大勢のメディアを前に、「うーん、じゃあちょっとだけね」と言って最後の試合を振り返った。

「とても感動的な日で、ここに向けてみんなで取り組んでいたからね。僕にとっても今日はとても大事で、今日が大切な日で、すべてを出し尽くしたかった。ホームスタジアムでファンの前での最後の試合を楽しみたかった。さらに優勝も決めることができたんだ。ハッピーエンドだね」

 ロッベンにとってもチームにとっても、簡単なシーズンだったわけではない。

「難しい試合だったよ。今シーズンは(バイエルンが)スーパーだったわけではないし、難しい時期もあった。それでも(ドルトムントとの)勝ち点9差を取り返して、優勝することができたんだ。それも最終節でね。素敵なことだよ。とても幸せだし、今日のことに感謝している。少し祝って、また来週(DFBポカール決勝)に向けて最後頑張りたいね」

 最後の舞台となったアリアンツ・アレーナでのプレー。ロッベンは何を思い、ピッチに入ったのだろうか。稀代の名ドリブラーは、ちょっと照れ笑いしながら語り出した。

「ピッチに立ってからすぐに走って、スライディングタックルもして、やれることすべてをやったよ。がむしゃらに、小さな子供のようにね。ずっと走り回ったんだ。それが今日、僕にとって大事だったんだ」

 だから、ちょっとのミスでも飛び上がって怒りを露わにし、届かなそうなボールにも必死で追いかけようとした。ゴールを決めたら全身で喜び、シュートを外したら悔しくて倒れこんでしまう。自分ができるすべてを出し切るために、ピッチにいる瞬間を最大限味わうために、そして愛するサッカーを心から楽しむために――。

 ロッベンは取材を終えると、すぐにバスのほうへと向かった。2人が去ったミックスゾーンには、なかなかその場を離れられないジャーナリストが結構いた。一時代を築いた両雄が、ここでプレーすることはもうないのだ。その意味を、それぞれが噛みしめていたのかもしれない。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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