ドイツ×アルジェリア戦・徹底解析 試合巧者のドイツが仕掛けた“ズレ”を生むポジションチェンジ
交代選手によるプレーリズムの変化
ポジションチェンジで重要なのは、スピードとリズムの変化だ。ボールアウトになった時だけ、左右のポジションを代えるだけでは相手にとってさほどの脅威にはならない。自分たちがポゼッションをしている時に、スピードとリズムに変化をつけながらポジションを動かしていくことで相手守備を揺さぶることができる。
その点で考えると、後半開始から途中交代で入ったアンドレ・シュルレは大きな変化をもたらした。鋭い動きを繰り返してボールを引き出し、武器であるスピードを生かした縦への突破で、前半のドイツの攻撃にはなかった深みをもたらせた。サイドに起点ができたことでよりバリエーションのある攻撃が可能になり、ドリブル突破を警戒させることで相手の意識が外に向き、ミュラーへのマークが少しずつ追いつかなくなってきた。ゴールにはならなかったが、後半に決定的なシーンもいくつか生まれている。
90分間は守り通したアルジェリアだったが、辛抱強いドイツの攻撃による疲労は確実に肉体と頭に蓄積されていた。93分、ドイツの先制ゴールの場面では、それまで1対1の場面ですんなり突破を許すことなどなかったアルジェリアが、一瞬のズレをミュラーに突かれ、ファーから飛び込んだシュルレを捕らえ切ることができなかった。最後まで諦めずに健闘したアルジェリアも素晴らしかったが、難しい相手を徹底的に“縦と横”に揺さぶり続け、ほんの少しのスキを見逃さなかったドイツからは、美しいサッカーをしながら脆さもあった前回大会と違い、勝利へのしぶとさとしたたかさが見られた。
取材・文/中野吉之伴 企画/COACH UNITED編集部
※ワールドカップ期間中、記事内で扱うシーンの一部はFIFAワールドカップ公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』のマルチアングル動画、選手毎のスタッツデータで確認できます。
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