日韓W杯関係者が明かすFIFAブラッター会長の素顔 「トップに立つような人間ではなかった」
捜査当局は内部情報をかなり抑えている
――もはや寸志の域を逸脱した額ですね。
「それでも当事者の意識は変わらなかった。それはなぜかと言うと、一つには被害者がいないからです。
例えば、FIFAのジャック・ワーナー元副会長には12億円の“賄賂”をもらった疑いが持たれています。しかし、これが立証されたとして、彼は誰にお金を返せばいいのでしょうか。もちろん、倫理的な問題はあります。でも、被害者はいないんです。
また、過去には90年代に行われた贈収賄の疑いでアベランジェ前会長らが告発されたこともあります。その際、ブラッターさんは『スイスでは違法でない』と、法を盾に彼らを擁護しました。実際、スイスには金銭のやりとりに対して高い匿名性と銀行の守秘義務があります。FIFA本部がスイスに置かれている意味は、その辺りにあるはずです。そして、米司法省がここまで厳しく追及してくるとは思っていなかった……というのが、FIFA幹部たちの正直な感想ではないでしょうか」
――捜査を指揮する新任のロレッタ・リンチ司法長官以下、司法省、FBI(連邦捜査局)、IRS(内国歳入庁)が合同捜査チームを構成。ここまでの捜査体制は、過去にはマフィア組織に対する壊滅作戦ぐらいしか例がないと聞きます。
「本気で動いているのは間違いないですね。例えば、事前に脱税容疑で逮捕されていたFIFAの元理事チャック・ブレイザー氏が、米司法省の司法取引に応じて捜査に全面協力しています。彼は北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)の事務局長も務めていた人物で、捜査当局はFIFAの内部情報をかなり抑えているようです」
――報道によると、FBIとIRSがブレイザー氏に近づいたのは11年のこと。脱税容疑の罪を減免する代わりに、捜査協力を求め、12年のロンドン・オリンピックの際には小型マイクが仕込まれたキーホルダーなどでFIFA幹部らとの会話を録音させた、と。まるで映画のようですね。
「起訴後の会長選でブラッターさんが再選されたことも捜査当局を刺激したと思います。今後も追及の手が緩むことはないでしょう」