久保建英らのU-20W杯「選外」に疑問 不完全なA代表への招集は“日本の宝”に有益なのか
久保、安部、大迫の3選手がコパ・アメリカ参戦へ? 招集権のない大会への参加に疑問符
日本サッカー協会(JFA)が今月開幕するU-20ワールドカップ(W杯)に出場するU-20日本代表のメンバーから、久保建英(FC東京)、安部裕葵(鹿島アントラーズ)、大迫敬介(サンフレッチェ広島)の3人を外した。当然、6月のコパ・アメリカ(南米選手権)に参戦する日本代表への招集が濃厚と報じられている。
確かに選手の目標はA代表なので、そこに相応しい実力者をわざわざ年代別代表に使って結果を取りに行く必要はない。それでは本末転倒になる。
だから、これがインターナショナルマッチデーに開催されるA代表戦やW杯予選などへの招集なら、実に筋の通った話だった。だが、招待参加のコパ・アメリカは代表チームの強制招集権がない。本当に久保や安部が真価を発揮できるチームが組めるのかも、しっかりと吟味したうえで決断するべきだった。
コパ・アメリカとU-20W杯を比較して、より上位進出への可能性を秘めているのは後者だろう。地球の裏側で開催されるコパ・アメリカは、日本にとって最も厳しい大会だ。世界に出ると内弁慶の傾向を見せる国でも、自分たちの大陸内ではサポートにも後押しされ、威信にかけて攻撃性を増してくる。前回招待参加した1999年大会でも、フィリップ・トルシエ指揮下の日本はグループリーグで1分2敗。特に地元パラグアイとの一戦は0-4の惨敗だった。まだ欧州でプレーする選手が中田英寿しかいなくて、Jリーガーの招集拒否もなかった時代のことである。
コパ・アメリカに出場する日本代表が、内外を問わず所属クラブに対して招集権を持たないことは事前に分かっていた。Jクラブからは積極的な協力を望めると甘い観測を持っていたのかもしれないが、少なくとも欧州クラブ所属のレギュラー格や新天地に移籍した選手を呼べないことは十分に予測できたはずだ。2011年に招待された際にも「チームが組めない」ことを理由に断ったわけだが、その後、日本代表選手の欧州進出は加速したのだから、当時と比べてもむしろ条件は難しくなっていた。
U-20代表の主力だった3人は、当然“日本の宝”になる可能性が高い。それだけに今、日本代表の戦力になるかどうかと同時に、世界への売り出し方も想定しておく必要がある。2つの大会ともに多くのスカウトが注目するわけだが、それぞれどちらでプレーさせたほうが輝けるかも、重要なポイントになる。
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。