リバプールに“神風”は再び吹く 時を超え「アンフィールドの魔物」が起こす奇跡
試合後に流れた、この夜2度目の『You'll Never Walk Alone』
そして最も過激なリバプール・サポーターが密集するゴール裏スタンド「コップ・エンド」の前に、誰が号令するでもなく選手とコーチ陣が肩を組んで横一列に並ぶと、スタジアムにこの夜2度目になる『You’ll Never Walk Alone』がかかった。
この時点では、スタジアム内で無数の人間が号泣していた。試合後にこのレコードがかかるのは異例だが、この場面を最も盛り上げる粋な計らいだった。スタジアム側がこんな素晴らしいハプニングをプレゼントするのも、クラブに関わる人たちの気持ちが一つになっていることの証明だ。
過去にもアンフィールドの欧州カップ戦で、いくつか奇跡的な試合を目撃した。
最初にこの目で見たのが、2002年3月19日に行われた当時の2次グループリーグ最終戦。フランチェスコ・トッティを擁するローマを相手に、2点差での勝利が義務付けられたなかで、見事に2-0勝利を収めた。2回目が04年12月8日に行われたグループリーグ最終戦。この試合もオリンピアコス相手に2点差勝利が絶対条件だったが、リバウドのFKで先制される苦しい展開。そこから3-1の勝利をもぎ取り、あの“イスタンブールの奇跡”につなげた。さらに直近の大逆転は、16年4月14日に行われたUEFAヨーロッパリーグ準々決勝第2戦。絶好調に見えたドルトムントに一時は1-3とされながら、4-3と逆転勝利を飾った。
そこに今回の4-0バルセロナ戦が加わった。この大逆転劇に関しては、確かにもう2度と起こり得ない奇跡に見える。だが、リバプール・サポーターの強い想念が生み出す魔物がアンフィールドに棲む限り、今後もまたこんな劇的な試合が何度も時を超えて出現するに違いない。
そしてこの“アンフィールドの魔物”こそ、究極のフットボールの状況と5万4000人の気力が極限で混合してピッチを吹き抜けレッズを助ける、真の神風なのである。
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森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。