リバプールに“神風”は再び吹く 時を超え「アンフィールドの魔物」が起こす奇跡
名将ベンゲルが予言していた奇跡 「第2戦をあの場所でやるのは最悪だ」
ところが試合前日、1996年から昨季まで22シーズンにわたってアーセナルを率いたアーセン・ベンゲルは、リバプールの決勝進出を「ひょっとしたらあるぞ」と予言した。
「もう30年近くもリーグ優勝から遠ざかっているリバプールが、なぜこれほど欧州の戦いで活躍できるのか。それはアンフィールドのおかけだ。あのスタジアムこそ、リバプールの大きな資産である。ヨーロッパで最も熱いスタジアムだ。(どのチームにとっても)第2戦をあの場所でやるのは最悪だ」
英国のサッカーメディア、識者、関係者がこぞってバルセロナの圧倒的有利を主張するなか、アーセナルを率い、リバプールと度重なる死闘を繰り広げてきた名将は、そう静かに語った。
自身も2007-08シーズンのCL準々決勝でリバプールと激突し、ホームでの第1戦を1-1ドローで折り返しながら、アンフィールドで行われた第2戦に2-4で大敗した苦い記憶がある。そして結果的に、このベンゲルの予言が当たった。
日本でもリバプールが起こした“奇跡の逆転劇”について、さまざまな角度から分析され、活字になっていると思う。しかしサラー、フィルミーノ抜きで、しかも今季左サイドバックというポジションながら、プレミアで驚異の11アシストを誇るアンドリュー・ロバートソンが、ハーフタイムに負傷交代を強いられる展開で、バルセロナを相手に4-0の圧勝劇を演じた理由を、戦術的に説明できる文章は存在しているだろうか。
それはリバプールを、信じがたい勝利に導いた当人であるユルゲン・クロップにしても同じだ。勝利監督インタビューで「どうやってこの勝利をつかんだのか?」という質問がまず飛ぶと、トレードマークにもなっている白い歯をガッと見せて破顔一笑し、「正直に言う、分からない」と答えた。
それから約1時間後、会見場に現れたドイツ人闘将はこのように語って、奇跡に不可欠だった要素を並べた。「このクラブはAtmosphereとEmotion、Desire、そしてFootball Qualityが混合して成り立っている。この何一つ欠けても上手くいかない」と。
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森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。