リバプールに“神風”は再び吹く 時を超え「アンフィールドの魔物」が起こす奇跡
CL準決勝バルセロナ戦の大逆転勝利を現地取材 体感したアンフィールドの魔力
5月7日に行われたUEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝第2戦で、リバプールがバルセロナを4-0で撃破して、第1戦の0-3負けをひっくり返し、逆転で決勝進出を果たしたことは世界中のサッカーファンを心底仰天させ、すでに伝説の域に達してしまったかのようだ。
ちなみに戦前の、英ブックメーカーによるリバプール決勝進出オッズは51倍だった。対するバルセロナは1.07倍。リバプールに賭けるのは酔狂なだけで現実味がなく、またバルセロナに賭けてもまったく旨味のない倍率だった。
本来ならブックメーカーも、両者がもっと競り合った状態で第2戦が行われて欲しかったに違いない。そうであれば、決勝進出賭けの売り上げも伸びただろう。しかし第1戦が3-0では、オッズに色をつけることもできない。確率を商売にしているプロとして、ブックメーカーは「バルセロナが間違いなく決勝に進出する」という極めて冷静な数字を当然のように提示した。
しかし、それも無理もないチーム状況だった。リバプールは自慢の3トップのうち、今季もプレミアリーグの得点王レースのトップを走るモハメド・サラーと、センターフォワードとして不可欠な存在であるロベルト・フィルミーノの2人が、負傷欠場することが確定していた。
華麗な“三銃士”が、サディオ・マネの“一銃士”となってしまったわけだ。日本的な表現なら“飛車角落ち”の状態。しかもリバプールは、プレミアでマンチェスター・シティと最終節までもつれ込む熾烈な優勝争いの渦中にいて、目に見えない疲労も心配されていた。
対するバルセロナは今季のリーガ・エスパニョーラを独走状態で駆け抜け、4月27日の第35節レバンテ戦(1-0)で早々と優勝を決めた。CL準決勝の第1戦と第2戦の間に行われた5月4日の第36節セルタとのアウェー戦には、リオネル・メッシやルイス・スアレスら主力は帯同せず。下位チーム相手に0-2完敗でも、痛くも痒くもない。消化試合で主力を休ませる代償としては安いものだった。
第1戦の結果もさることながら、これだけチーム状況に差が生じると、第2戦でリバプールが3点差のビハインドを跳ね返し、決勝に進出するというシナリオにまったく現実味がなくなってしまったのも仕方がない。
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森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。