「僕が負けているというのは全くない」 南野拓実、“絶対王者”ザルツブルクで高まる自負心
スタメンを「外れる理由は全くないって自分では思ってます」
チームのことだけではなく、自身についてもそうだ。大事な試合でスタメンを外されたことに、納得しているわけではない。チームのために、自分がどれだけ貢献してきたかという自負もある。だから「外れる理由は全くないって自分では思ってます。(ポジション争いで)僕が負けているっていうのは全くない」と断言する。
だからといって、ベンチスタートとなったことで自暴自棄になったりはしない。すぐに気持ちを切り替え、チームの勝利のためにできることを探していく。この日もアップをしながら、ピッチで戦う仲間に手を叩きながら激励の声を飛ばしていた。
後半22分、FWハンネス・ヴォルフと交代でトップ下の位置に入る。前半の2ゴールでザルツブルクがリードしているが、後半に入ってからラピド・ウィーンの猛攻に苦しんでいる時間帯だった。こうした状況で交代選手に求められるのは、「(得点に絡んで)試合を決めるか、守備のところの1対1でしっかり負けない。監督もそう言っていた」と受け止めている。
途中出場選手は、アピールしたい気持ちが強くなりすぎる時がある。その思いがチームに勢いをもたらすこともあれば、チグハグにしてしまうこともある。だからこそ試合の流れをすぐに読み取り、必要とされるプレーを整理してできるという南野の能力は、確かに評価されるべきものだろう。
「1人レッドカードが出て(後半38分にDFパトリック・ファルカスが2枚目の警告で退場)、少し守備の時間が長い時間帯があった。それはそれで割り切って、やれることはやり切ったんじゃないかなって思います」
いつも思い通りに出場機会が与えられるわけでも、願った通りに試合が進むことばかりではない。でもそうではない時に、どんな立ち振る舞いをするのか、どのように受け止めるのか、それでもポジティブに自分を奮い立たせて前に進んでいけるのかが問われる。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。