長谷部誠、ドイツ人記者も唸らせる冷静さ 敗戦後に見せた堂々たるリーダーの振る舞い
フランクフルトが本拠地でアウクスブルクに1-3敗戦 「自分たちのミスが多かった」
上手くいかない試合というのはある。どんなに調子が良いシーズンを送っていても、ミスばかりが起きてしまうことがある。フランクフルトにとって、14日に行われたブンデスリーガ第29節アウクスブルク戦(1-3)は、噛み合わせ方を忘れてしまったかのような試合だった。
先制点を取ったところまでは良かった。15分、左サイドのMFフィリップ・コスティッチがゴール前に鋭いクロスを上げると、FWゴンサロ・パシエンシアが高い打点のヘディングシュートを決めた。5万1000人で満員となったスタジアムは大喝采。今日もリーグ戦6連勝中のチームの快勝劇が観られると、ワクワクしたことだろう。
だが、そこからアウクスブルクに反撃を許してしまう。アウクスブルクにとっては、監督交代した直後の試合だ。元日本代表MF長谷部誠が、「みんなやる気に満ち溢れていた。またリセットしてやってるなという感覚があった。やりづらい相手ではありました」と認める相手の必死さを押し返すことができず、前半のうちに逆転されてしまった。
加えてフランクフルトは、全体的にUEFAヨーロッパリーグとの過密日程の疲れがあったのか、足が重く、なんでもない場面でトラップミスをしてボールを失ったり、相手のプレッシャーがかかっている状況でもないのに、なんでもないパスが誰もいないところへ飛んでいってしまう。
守備でも中盤でボールを取れるべきところで取れず、薄いところに回されては簡単にDFがサイドに引きずり出されて、長谷部の周囲にぽっかりスペースができてしまうことも少なくなかった。普段はミスが本当に少ない長谷部も、この日はリズムを作り出すことができず、味方への簡単なパスをカットされてカウンターのピンチを招く場面もあった。
「自分たちのミスが多かったですし、簡単な失点を与えてしまった。相手どうこうよりも自分たちかな」と長谷部が指摘したとおり、フランクフルトは普段通りのプレーができないまま1-3で負けてしまった。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。