大迫勇也、「もどかしい時間」の先へ ブレーメン復帰戦で“信頼”に応えた1アシスト
ボルシアMG戦で2カ月ぶりの実戦復帰 クラーセンの同点ゴールを導く
大迫勇也が帰ってきた。
4月7日、アウェーで行われたブンデスリーガ第28節ボルシアMG戦の後半5分だった。アップをしていたブレーメンFW大迫がベンチに向かって駆け出す。ビブスを脱ぎ捨て、コーチ・監督から指示を聞く。そして同7分、FWヨナサン・エッゲシュタインと交代。ブンデスリーガ出場は昨年12月22日のRBライプツィヒ戦(2-3)以来となる。ピッチに駆け出すと、すぐに味方選手にパスを要求した。
ホームのボルシアMGが1点をリードしている展開だ。監督のディーター・へキングが、今季限りでチームを去ると発表された後の試合。GKヤン・ゾマーは「監督とみんなで一緒に誓ったんだ。ここからの7試合を全力のプレーで戦い抜くと」と語り、DFマティアス・ギンターは「UEFAチャンピオンズリーグ出場という大きな目標を叶えるために、もう一度力を振り絞る」と気合いを入れていた。現在5位のボルシアMGは、この試合では立ち上がりから競り合いへの出足がとても鋭く、ブレーメンは思うようにチャンスメイクできずに苦しんでいた。
大迫もいきなり激しいタックルの餌食に遭ってしまった。出場から5分、中盤のセンターライン付近でボールを持って右サイドにパスを展開しようとした瞬間、ボルシアMGのMFデニス・ザカリアが背後からスライディングタックルで強襲した。左足を押さえて倒れこむ大迫。地元紙の「クライスツァイトゥング」が試合レポートで、「あれがイエローカード止まりだったのは、監督の(フロリアン・)コーフェルトにとって驚きだったことだろう」と記すほどのタックルだった。
タッチラインぎりぎりまで飛び出したコーフェルトは腕を組み、手を口に当てて無事を祈る。ようやく復帰してくれた大迫が、すぐに離脱となったら怒りをどこにぶつけていいか分からなかったことだろう。幸いにも大迫は、すぐにまたプレーを続けることができた。試合後のコーフェルトは「審判の判定に関しては何も言うつもりはない。ただユウヤが、無事にまたプレーを続行することができてうれしかった」とこのシーンを振り返り、安堵のコメントをしていた。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。