なでしこJは「技術に優れ、クレバー」 独代表の声で再確認した“武器”とW杯への課題

ドイツ女子代表のフォス=テクレンブルク監督【写真:Getty Images】
ドイツ女子代表のフォス=テクレンブルク監督【写真:Getty Images】

敵将の言葉に潜んだ“日本対策”のポイント 「スペースを与えてしまったら…」

 この試合の2得点は、ともに相手GKのミスから生まれたもの。1点を取りに前がかりになった終盤はカウンターからチャンスも作った。ただ押し込まれていた時間帯には、まったく攻撃の形が作れなかったという反省点は残っている。センターバック(CB)のDF熊谷紗希は「自分は後ろの人間なので、やられないところを修正しながら、ディフェンスラインを合わせていきながら」と一言添えながら、その点を指摘していた。

「一つひとつの球際だったり、自分たちがボールを持っている時間があれだけ短いというか、あれだけ真ん中で引っ掛けてしまうと前に進めない。相手のミスから2点取ったけど、こういった相手に『じゃあどうやって点を取るの?』というところも課題になってくる」

 フォス=テクレンブルク監督も「今日の試合を見たら、日本にどれだけのクオリティーがあるかは分かると思う。そして、それは試合前から分かっていた。素晴らしい技術を持った選手たち、プレーにオートマティズムがある」と認めている。

 パスをつなぎ、相手をはがすのが上手い。ビルドアップから中盤までは、小気味良くボールを運ぶことができる。では、そこからの展開をどうするか。

 フォス=テクレンブルク監督は「スペースを与えてしまったら、そこを使われてしまう」と日本の攻撃について語っていたが、「スペースを与えてしまったら」という状況がなければ、そこまで相手に怖さを感じさせられないとなると厳しい。W杯に向けて取り組まなければならない、大事なポイントだ。

 例えばドイツはパスを飛ばし、相手を越えていくのが上手い。“飛ばす”とは、偶然任せにロングボールを蹴るということではない。GKと2CB、そしてボランチの1枚とでビルドアップを行い、その間にほかの選手は相手最終ライン回りのスペースで起点作りの準備を始めている。パス回しからCBが、そこへ縦パスを当てることができたら、一気に前線で数的有利の状況になる。突破してからどうするではなく、突破後のプレーをイメージしてゲームを作る。日本にも、そのあたりの整理が必要となってくるはずだ。

中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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